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川柳の都・大阪の雄「番傘川柳本社」110年の灯 戎橋白粉紙を散らす恋 上質の笑いは時越えて

大正時代発行の川柳「番傘」(上)と現代の川柳「番傘」=山崎一輝撮影

 川柳界の老舗として知られる大阪の結社「番傘川柳本社」(大阪市北区西天満)が今秋、誕生から110年目を迎える。近代川柳の大立者の一人で<ぬぎすててうちが一番よいという>などを詠んだ岸本水府(1892~1965年)が創立した。月刊の川柳誌『番傘』の刊行は創立以来、営々と続く。世紀をまたいだ結社の歩み、時代のエポックなどを同社の5代目主幹で川柳作家、田中新一さん(72)に尋ねた。【有本忠浩】

    偉大なる岸本水府の精神 人の心理と人情の機微を

     「川柳」は、江戸中期に活躍した前句付点者(てんじゃ)(選者)、柄井(からい)川柳(1718~90年)の名前にちなんでいる。「五七五」の形式は俳句と同じだが、原則季語を要さず世相や人情を17字に託す庶民の文芸として親しまれてきた。

     江戸時代の『柳多留(やなぎだる)』に代表される古川柳から、近・現代川柳に至るまで、他の文芸と同様、句風や表現様式などを巡る新旧の対立・論争や浮沈もあった。

    創刊からの歴史について語る「番傘川柳本社」の田中新一さん=大阪市北区で、山崎一輝撮影

     田中さんによれば、近代川柳の夜明けに現れた一人が、1909(明治42)年に「関西川柳社」を作った西田当百。これが「番傘川柳本社」の前身で、「番傘の誕生110年」はこの年を起点にしているという。西田は大阪毎日新聞勤務時代に「毎日柳壇」を開設し選者を務めた。大阪・ミナミの法善寺横丁にある料理屋「正弁丹吾亭」前には、当百の<上かん(燗)屋ヘイ〓〓とさからはず>の句碑がある。

     その彼に師事したのが岸本水府だった。水府の名は、田辺聖子さんの手になる評伝『道頓堀の雨に別れて以来なり』(読売文学賞、泉鏡花賞、井原西鶴賞)で一躍世に広まった。水府が活躍した当時、「川柳界の6大家」と称された一群がいた。そのうちの3巨頭が関西にいて、いずれも関西川柳社から巣立った。水府、麻生路郎、椙元紋太(すぎもともんた)。路郎、紋太が旗揚げした結社や川柳誌(現在の『川柳塔』、『ふあうすと』)は当初と名称こそ異なるが精神は引き継がれ関西の川柳界をけん引している。

     『番傘』の初代主幹、水府には、歌舞伎の初代・中村鴈治郎を詠んだ<頬かむりの中に日本一の顔>の他、<かんざしをさす時腕が太く見え><とまつてゐてもよい母の腕時計><戎橋(えびすばし)白粉(おしろい)紙を散らす恋>などの句もある。彼は、今でいう名コピーライターでもあった。グリコ「一粒300メートル」はじめ、化粧品の桃谷順天館、福助足袋の宣伝にも才覚を発揮した。

     田中さんの父の故・桂太楼さんも『番傘』の幹部だった。大阪市内の自宅で定期的に句会を催していたため、「幼少から川柳に親しんだ。小学1年時から父に連れられ、結社を問わずにさまざまな句会に参加した」。そんな田中さんのまぶたの奥に今も鮮明に焼き付いている光景がある。1954年2月にあった『番傘』例会での水府の言動。田中さんは小学2年だった。

     「川柳の第4運動」と呼ばれる、だじゃれを排する川柳の刷新を水府は提唱した。田中さんは「川柳が詩、短歌、俳句などより低く見られ、戦後は特に趣味娯楽の中に置かれがちなことに水府は憤っていた」と語る。

     終戦前後の『番傘』は、他の媒体同様、軍靴の響きの中で紙の配給統制や検閲にあえいだ。そんな苛烈な時代を乗り越え今日まで結社、川柳誌が生き永らえているのは--。

     田中さんは「水府が川柳にかけた信条は、だれにでも分かって、だれにも作れない句を作ること。そのためには、川柳の伝統的な3大要素(うがち、軽み、滑稽(こっけい)味)を重んじながら世相、人情の機微をいかに織り込むか。同人らにその精神が今も引き継がれているからではないか」。そう顧みるのだ。

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