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炎のなかへ

/178 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

その夜(13)

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 母の君代が燃えあがる橋と河川敷に倒れた人たちに手をあわせていた。目の前の炎の景色のなかに、すでに亡くなった人とたった今、亡くなろうとしている人がどれほどいるのだろうか。はらわたをすべて抜かれたタケシの空っぽの心に、そんな疑問が浮かんだ。河川敷には火傷(やけど)ひとつない家族が眠るように折り重なっている。川面には兄弟の遺体が手をつないだまま浮かんでいた。ちいさな子は直邦くらいか。橋のうえでは死者の薪(まき)から盛んに炎があがり、燃える防空頭巾が火の粉とともに空高くのぼっていった。

 すべて飛行機から落とされた焼夷(しょうい)弾のせいだった。その爆弾とB29を製造したのはアメリカだ…

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