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ナビゲート2018

米に求められる根気強さ=古川勝久(安全保障問題専門家)

 当初見込みに反して、朝鮮戦争の終結宣言は、米朝合意文では言及されなかった。終結宣言は北朝鮮がこの数年間、元米政府当局者チームとの非公式協議を何度も経て築き上げてきた提案だ。米国との平和協定の締結交渉には時間がかかるので、シンガポールではまず終戦宣言から始める戦略だった。

     米国との平和協定の締結は長年にわたる北朝鮮の悲願である。政策研究大学院大の道下徳成教授の名著『北朝鮮 瀬戸際外交の歴史』は、1974年以来、北朝鮮が何度も米国に平和協定交渉を提案しては拒否された歴史的経緯を克明に記している。米国を交渉に引きずり出すため、北朝鮮は過去に幾度となく「瀬戸際外交」として黄海にある韓国の離島群や周辺海域に軍事・外交的攻勢を仕掛けては失敗した。過去40年以上、北朝鮮が腐心してきた課題だ。

     今回、トランプ大統領の登場という千載一遇のタイミングを北朝鮮は逃さなかった。彼がリアリティーTVショー出身者の異色の米大統領であり、米中間選挙を前に「歴史的偉業達成」の栄冠を重視する可能性が高いことを、北朝鮮交渉チームは正確に把握していたという。「対米核抑止力の確立」という遠大な交渉カードを掲げて、米朝首脳会談開催に持ち込んだ。

     北朝鮮はトランプ氏の言葉を信用するほど初心(うぶ)ではない。逆もまた然(しか)り。今回の会談は明らかに調整不足。信頼構築には長期プロセスが必要となる。

     重要なのはこれからだ。いかに大量破壊兵器の全廃を導くか、米国には北朝鮮に敗(ま)けない根気強さが求められる。イラン核問題を再燃させたトランプ大統領に、北朝鮮を忘れさせてはいけない。


     林英一、古川勝久、山内マリコ、粥川準二、小田島恒志の各氏が交代で執筆、毎週水曜日に掲載します。

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