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米朝首脳会談

拉致提起、期待と疑念 「日朝交渉を」希望つなぐ

 史上初の12日の米朝首脳会談。共同声明で朝鮮半島の非核化を確約するとともに、トランプ米大統領が拉致問題も「提起」し、和平実現に向けた新たな一歩に全世界の注目が集まった。だが、今後の見通しに具体的な言及はなく、会談の行方を見守った拉致被害者の家族や被爆者らの胸には、歴史的な会談への評価と、いまだ不透明な先行きへの不満や不安が交錯した。

     横田めぐみさん(行方不明時13歳)の母早紀江さん(82)は、川崎市内の自宅で会談の様子を見守った。トランプ大統領が拉致問題を提起したことを「歴史的なことが起きたという思い」と評価した上で「あとは日本(政府)がやらなくてはならないところにきた。しっかりやるべき姿を見せてほしい」と訴えた。夫滋さん(85)は4月から体調を崩して入院しており、早紀江さんは「もう少し頑張ったらきっと会えるからと(滋さんに)言おうと思っている」と語った。

     鹿児島県日置市で拉致された市川修一さん(同23歳)の兄健一さん(73)=同県鹿屋市=は「拉致問題についてもう少し突っ込んだ話を聞けると思っていたので残念」と目を伏せるも、「トランプ大統領が金(キム)(正恩(ジョンウン))委員長に問題提起してくれたことはありがたい。これをきっかけに日朝交渉につながればいい」と望みをつないだ。

     熊本市出身の松木薫さん(同26歳)の姉斉藤文代さん(72)=熊本県菊陽町=は、テレビで米朝首脳会談を見守った後、熊本県庁で記者会見し、「共同声明に拉致問題が盛り込まれなかったことにとてもショックを受けた」と表情を曇らせた。13日は松木さんの誕生日で65歳になる。「言葉にならない。薫がかわいそう」と思わず目頭を押さえた。

     2002年に帰国した拉致被害者の曽我ひとみさん(59)はコメントを発表。曽我さんは「結果は何も出ませんでした。もっと具体的な答えを引き出してほしかった。一分一秒を争っていると何度も訴えてきたはずです。とても残念としか言えません。安倍(晋三)総理にはぜひとも日朝会談を開催すべく行動してほしい」と求めた。

     拉致被害者の地村保志さん(63)は12日、地元の福井県小浜市の中学校で講演した後の会見で「米朝が互いに手を握ることは、私が北朝鮮にいた当時ではあり得ないことだ」と驚き、「拉致被害者の高齢化が進んでいるが、希望を持ってほしい」と訴えた。【堀智行、中里顕、新開良一】

    「非核化肩透かし」落胆の被爆者

     長崎の被爆者で原水爆禁止日本国民会議議長の川野浩一さん(78)=長崎県長与町=は「米朝の閉じていた扉を開けた点で意味がある」とする一方で「トランプ大統領は金(正恩)委員長にもっと踏み込んだ非核化を約束させると期待していたので、肩透かしをくらった」と残念がった。

     川野さんは、両首脳が朝鮮半島の非核化を目指すことで合意したことは評価しつつ「北朝鮮に核兵器とミサイルがどこに何発あるのかは不明だ。共同声明に、検証可能で不可逆的な非核化の記述もない」と指摘。「私たち被爆者には時間がない。早く非核化の結論を見たい。今後の推移を注視するしかない」と訴えた。

     長崎原爆遺族会の本田魂会長(74)=長崎県時津町=は「自分の顔を立てたいトランプ大統領と、とにかく制裁を解除してほしい金委員長の互いの利害が一致しているだけだ。非核化に向けた具体的な話がなく、手放しで喜ぶことができない」と冷静に受け止める。その上で「北朝鮮の非核化に向けて第三者が監視、検証できるようになるかどうかが重要だ」と語った。

     広島県原爆被害者団体協議会(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(76)も朝鮮半島の非核化が動きだすことを歓迎する一方で、具体的な道筋が今回示されていない点を指摘。「非核化には長い時間がかかる。全世界が北朝鮮の一挙一動を見守る必要がある。米中露など核を保有する5大国も核軍縮への意思表示をするべきだ」と注文をつけた。

     日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は東京都内の事務所で記者会見。田中熙巳(てるみ)代表委員(86)は「お互いの信頼関係ができたのではないか。信頼関係がないと話が進まないので、そこは評価できる」とした上で「非核化をどう進めていくかは将来に委ねられているようだ。肝心なことはこれからだ」と、今後に期待を寄せた。【今野悠貴、加藤小夜】

    「ミサイルもう来ないで」 青森や秋田、安全願う声

     北朝鮮の度重なるミサイル発射に脅かされてきた東北地方では「もう飛んでこなくなれば」と安全を願う声が聞かれた。

     ミサイル防衛用早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」が米軍車力通信所に配備されている青森県つがる市。同市の主婦、尾野一代さん(66)は「北朝鮮は約束を破ってきた過去もあるので100%とは言えないが、飛んでこなくなるのでは。まず一歩を踏み出したのは大事だ」と話した。

     弾道ミサイルは青森県沖にも落下した。新深浦町漁協(同県深浦町)の松下和芳さんは「『漁場の近くに落ちたらどうしよう』という不安の声はあった。飛んでこないならそれに越したことはないのだが……」と語った。

     政府が導入を目指す陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の候補地・秋田市。配備に反対する市民グループの佐藤信哉代表(56)は「朝鮮半島情勢が緩和に向かう中、配備すると再び緊張が高まってしまうのではないか」と改めて撤回を求めた。【北山夏帆、山本康介】

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