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米朝首脳会談

拉致「日本が前に」 家族、期待と落胆と

 史上初めて行われた12日の米朝首脳会談。共同声明で朝鮮半島の非核化を確約するとともに、トランプ米大統領が拉致問題も「提起」し、新たな一歩を踏み出した。だが、問題解決の具体策に言及はなく、会談の行方を見守った拉致被害者の家族や被爆者の胸中に、期待と落胆が交錯した。

     横田めぐみさん(行方不明時13歳)の母早紀江さん(82)は同日夕に取材に応じ、トランプ大統領が拉致問題を提起したことについて「本当にうまくいくのかなという思いで見ていたが、歴史的なことが起きたという思い」と評価した。早紀江さんはその上で「あとは日本(政府)がやらなくてはならないところにきた。しっかりやるべき姿を見せてほしい。悲観はしていない」と前を向いた。

     4月から体調を崩し入院している夫滋さん(85)にはこれから会談の結果を伝えるといい、「すぐには解決しないと思うが、もう少し頑張ったらきっと会えるからと(滋さんに)言おうと思っている」と話した。

     母ミヨシさん(同46歳)と新潟県真野町(現佐渡市)で拉致され、2002年に帰国した曽我ひとみさん(59)はコメントを発表した。この中で曽我さんは「結果は何も出ませんでした。もっと具体的な答えを引き出してほしかった。一分一秒を争っていると何度も訴えてきたはずです。とても残念としか言えません。安倍(晋三)総理にはぜひとも日朝会談を開催すべく行動してほしい」と求めた。

     拉致被害者、田口八重子さん(同22歳)の兄で家族会代表の飯塚繁雄さん(80)は「再度拉致問題がクローズアップされたことは歓迎する」と述べた。一方で「米国の強い姿勢で日本人拉致被害者を帰す確認をしてほしかった」とも語った。日本政府に対しては「解決に向けどうすればいいのか早急に考えて、米朝の関係が薄くならないうちに制裁の解除や見返りをアピールして北朝鮮をこっち(日本)に向かせてもらいたい」と訴えた。

     1978年に鹿児島県吹上町(現日置市)で拉致された増元るみ子さん(同24歳)の弟照明さん(62)は「想定内の結果」との見方を示し、「会談を受け、北朝鮮が変わっていくのか見極めないといけない」と話した。【堀智行、国本愛、古賀三男】

    被爆者「肩すかし」

     長崎の被爆者で原水爆禁止日本国民会議議長の川野浩一さん(78)=長崎県長与町=は「米朝の閉じていた扉を開けた点で意味がある」とする一方で「トランプ大統領は金委員長にもっと踏み込んだ非核化を約束させると期待していたので、肩すかしをくらった」と残念がった。両首脳が朝鮮半島の非核化を目指すことに合意したことは評価しつつ「北朝鮮には核兵器とミサイルがどこに何発あるのか不明。共同声明に、検証可能で不可逆的な非核化の記述もない」と指摘。「私たち被爆者は時間がない。早く非核化の結論を見たい」と話した。

     長崎原爆遺族会の本田魂会長(74)=長崎県時津町=は「自分の顔を立てたいトランプ大統領と、制裁を解除してほしい金委員長の互いの利害が一致しているだけだ。手放しで喜ぶことができない」と冷静に受け止めた。

     日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳(てるみ)・代表委員(86)は「信頼関係がないと話が進まないので、そこは評価できる」とした上で、「非核化をどう進めていくかは将来に委ねられているようだ。肝心なことはこれからだ」と、今後に期待を寄せた。

     広島県原爆被害者団体協議会(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(76)は「非核化には長い時間がかかる。全世界が北朝鮮の一挙一動を見守る必要がある。米中露など核を保有する5大国も核軍縮への意思表示をすべきだ」と指摘した。【今野悠貴、加藤小夜、竹内麻子】

    安全操業へ対話窓口を 松前さくら漁協

     北海道松前町では昨年11月、北朝鮮の木造船が無人島に漂着して避難小屋が荒らされる事件があった。松前さくら漁協(同町)の佐藤正美組合長は「北朝鮮の漁船が日本海で違法操業をしており、国交が正常化していないため我々は安全操業ができない」と指摘。「アメリカの働きかけで、今後話し合いの場ができることを期待している。再び北朝鮮の漁船が漂流してきても対応先の窓口がなく困るので、対話ができるように変わってほしい」と話した。【日下部元美】

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