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演芸評

桂南天独演会 飄々と自分流、巧みな構成で

 サンケイホールブリーゼ(912席)の桂南天二回目の独演会。かつての名優・有島一郎(今でいう北村有起哉か?)のような飄々(ひょうひょう)とした容姿で語る南天落語は、師匠桂南光から古典落語をいっぺんひもといて自らの落語を再構築するといった手法を受け継ぎ、大師匠桂枝雀のふわふわっとした世界観も隔世遺伝、その上シニカルでもある。

     前座は桂そうばの「十徳」。生真面目さの中に台詞(せりふ)の発声に可笑(おか)し味もある素直な語り。南天の第一席「遊山船(ゆさんぶね)」。マクラで語るは若手数人との落語会での逸話。月亭方正、桂吉弥、月亭八光と有名どころの名前を出すと「お~!」と声を上げる客席に舞台から対応してゆく余裕は、広い会場でのスケールを身につけつつある感を受ける。「遊山船」は、桂ざこば演出が底本。「振り袖に南京豆を入れたら食べにくいやろな」や、川に投げた卵の巻き焼きに群がる鯉(こい)を羨み「鯉になりたい!」と叫ぶざこば個性の喜六を、南天の間合いで、そう感情の起伏なく語ると全くの古典落語として受け継がれていることに感心。浪花(なにわ)橋から眺める主人公と屋形船で遊ぶお大尽とを「これが貧富の差というものか」と見る南天独自の目線も。続くは桂雀五郎「短命」。見た目に貫禄も出て来た落ち着いた語りと古風さは、次の高座へのコントラストとなる。

     第二席は「算段の平兵衛」。ぬけ声の滑稽噺(こっけいばなし)向きの彼がストーリーテラーの米朝落語代表作をどう語るかだが、怪談噺を語るがごとく言葉に緩急をつけて話してゆく。悋気(りんき)しいの本妻に庄屋が言う「立ち上がって猫蹴るんやないがな」との一言は南天的。ただ、盆踊りで平兵衛が庄屋の死骸を踊らすくだりは、文楽的滑稽な動きよりも米朝演出のリアリティーを踏襲する方が全体として効果的に思う。第一、死体は重いものだ。あまり演じられることのない後半での按摩(あんま)の徳の市の目つきと動きも良い。中入り後の南天の「代書」は、漫画的に聴かせたが、詰め込み過ぎの感。もう少し整理が必要かとも。ただ客を前にして受けを重視する演者の心理も理解する。会全体としての演者演目の選び方は秀逸。来年の高座も期待したい。(作家・戸田学)

     大阪・サンケイホールブリーゼで6月2日

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