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余録

よく研究論文の学術誌への掲載にたとえられる現象が江戸時代にもあった…

 よく研究論文の学術誌への掲載にたとえられる現象が江戸時代にもあった。和算の愛好家が自分の作った問題と解答を額や絵馬にして神社仏閣に奉納した「算額」である。他の愛好家がそれを見て検証したのである▲時には誤りを指摘したのをきっかけに、和算の大家の間で大論争になったこともある。和算は庶民の間に広く浸透し、農村や漁村でも算額が奉納された。なかには10代の娘が作った問題もあり、和算愛好の広がりと深さがうかがえる▲思えば庶民が趣味で高等数学に取り組み、成果を神仏に奉納したというのもすごい話だ。その正誤についてオープンな議論がなされたのにも感心する。そんなご先祖が聞けば眉をひそめそうな昨今の日本の科学技術研究の実情である▲先日公表された科学技術白書の最新データによれば、引用回数の多い論文数の国際比較で日本は10年前の世界4位から9位に転落した。論文数も減って2位から4位となったが、4倍に増えた中国はじめ主要国は軒並み増加している▲白書は博士課程への進学者や海外への派遣研究者の減少、科学技術関係予算の伸び悩みも指摘している。これらの多くの指標は欧米や中国を大きく下回っており、日本の科学技術の国際的な地位低下はなおも続くと考えざるをえない▲国際共著論文数の伸び悩みや、注目度の高い研究分野への参画が少ないのも気になる。世界中の誰もが真理を奉納できる科学技術の神殿を前にしながら、知的挑戦の意欲の乏しさがうかがえるからだ。

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