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2月に死刑廃止を訴える集会に出席後、姉秀子さん(左)と会場を後にする袴田さん。再審の可否の判断は最高裁に移ることになる=東京都千代田区で2018年2月24日、小川昌宏撮影

 「拘置をこれ以上継続することは、耐えがたいほど正義に反する」。2014年に袴田巌元被告(82)の再審開始を認めた静岡地裁は死刑停止と釈放を同時に認める決定を出した。再審確定前の死刑囚の釈放は戦後初めてで、元検察幹部は「あり得ないと思った」と振り返る。逆に、日本弁護士連合会で死刑廃止運動に取り組む小川原優之弁護士(64)は「誤判による死刑執行の恐れは現実的」との思いを強くした。

     日弁連は16年、「冤罪(えんざい)による処刑を避けることはできない」などとして袴田事件を例示した上で、「20年までの死刑制度廃止」などを求める宣言を採択。だが、宣言は今のところ国民的支持を得るには至っていない。今月3日に解散した「全国犯罪被害者の会」の中心的存在だった岡村勲弁護士(89)は「国が死刑をしなければ、遺族の怒りや悲しみはどこに持っていけばいいのか。誤判しない仕組みを作ればいいだけだ」と強調する。

     法務省は昨年7月、18年ぶりとみられる再審請求中の死刑囚の刑を執行した。当時の金田勝年法相は「再審請求中には執行命令を出さない扱いをしたら、再審請求を繰り返す限り永久に執行をなし得ない」と断言。抑制的であっても厳格に死刑制度を維持、運用していくという国の姿勢をのぞかせた。

     11日、東京高裁は袴田さんの再審開始を取り消しながら、死刑停止と釈放は維持するという「矛盾した」(検察幹部)決定を出した。事実上、再収監の可否に関する判断を最高裁に先送りした形だ。

     「東京高裁の理屈は通っていない。(再審不開始という)結論に自信がないようにも見える」。08年に死刑執行された元死刑囚(当時70歳)の死後再審を求めている岩田務弁護士(72)は首をかしげる。

     元死刑囚は福岡県飯塚市で女児2人が殺害された「飯塚事件」で逮捕され、一貫して否認したが、06年に死刑が確定した。確定判決は、遺体から採取された血液のDNA型が元死刑囚と一致したとしたが、再審無罪となった「足利事件」と同じ旧式の鑑定手法で懐疑的な専門家は多い。

     09年に始まった再審請求審で福岡地裁は14年、「鑑定をただちに有罪の根拠とはできない」と指摘しつつ、他の状況証拠と組み合わせて請求を棄却した。福岡高裁も支持し、弁護側は最高裁に特別抗告している。

     岩田弁護士は死刑の存廃論議とは距離を置くが、袴田、飯塚両事件が死刑制度の危うさを象徴していると見る法曹関係者は多い。二つの再審請求に対する最高裁の答えは、死刑の意味を社会に問い直す機会につながる可能性を秘めている。(石山絵歩、古川幸奈、伊藤直孝、服部陽が担当しました)

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