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埼玉県内で1人暮らしを初めて3年目。空手部の活動や飲食店のアルバイトにも励む西村海飛さん=埼玉県宮代町で

 親への感謝の気持ちを、困難な状況で生きる子供たちの支援につなげる毎日新聞の「母の日・父の日募金キャンペーン」。今回は、5歳の時に父を亡くし、自身と似た境遇の子供たちを支援するため、「あしなが学生募金」の活動に取り組む日本工業大3年の西村海飛(かいと)さん(20)を紹介する。

     ●5歳の時、父他界

     亡き父は、「海飛」という名前に「大海のような広い心で、世の中に羽ばたいていけるように」と思いを込めた。西村さんは「あしなが育英会」の支援を受けた奨学生らで組織する「あしなが学生募金事務局」の一員だ。「親を亡くした子供たちに進学や夢を追う機会をあきらめないでほしい」との思いで、街頭募金活動を支えている。

     西村さんは静岡県富士宮市で3人兄弟の末っ子として生まれた。父は、ゴルフ場のレストランのコックだったが、仕事中に突然倒れ、西村さんが5歳の時に他界。「まだ幼かったので『死』の意味がよくわからなかった。ただ、兄や母が号泣しているのを見て涙があふれた」と、振り返る。

     父の記憶は断片的に残っている程度。仕事熱心で、家でのんびりしていたような印象はない。漠然と覚えているのは職場のレストランで家族に作ってくれる特製ハンバーグのおいしさ。幼心に父が誇らしかった。今はもう二度と食べることができないハンバーグは、家族だんらんの思い出の一品だ。

     ●3兄弟育てた母

     父の死後、それまで専業主婦だった母は働き始め、女手一つで3兄弟を育てた。西村さんはボーイスカウト活動や空手、バスケットボールなどの習い事に精を出し、のびのびと成長。時折、習い事を休もうとする西村さんに、母は「中途半端はよくないでしょう。何でもやり通すことが大事よ」と背中を押してくれた。一家の大黒柱の父が急にいなくなった寂しさをできる限り子供たちに感じさせまい、と優しくも厳しく振る舞っていた。西村さんは「3人兄弟を育てるのは大変だったと思う。感謝しています」と郷里の母への思いを打ち明けた。

     あしなが育英会の奨学金を受け始めたのは高校1年の時だ。「家計面で少しでも母には楽になってもらいたい」という一念だった。その後、奨学金のお陰で、無事に日本工業大工学部に進学。今は幼少期から関心があった建築学を埼玉県宮代町のキャンパスで学んでいる。

     「親を亡くした日本やアフリカの子供たちにチャンスをください」。5月5日、小田急電鉄新百合ケ丘駅(川崎市)の前で、西村さんは通行人に呼びかけた。病気や災害で親を亡くした子供たちの奨学金を募るあしなが学生募金の活動だ。毎年、春と秋の2回、全国で実施している。西村さんは東京、埼玉、神奈川など首都圏エリアを管轄する事務局次長補佐という立場で運営に携わっている。4月21、22、28、29日と5月5日の計5日間で集まった額は全国で1億1000万円。首都圏エリアでは、そのうち約4000万円の寄付金が集まった。

     ●感謝込め頭下げる

     「あしながと、ここまで長く密接に関わるとは思っていなかった」と話す西村さん。募金活動に取り組むようになったのは、高校1年の夏にあしながのキャンプに参加したことがきっかけだ。静岡県御殿場市で過ごした4日間で、親を亡くした奨学生同士が「自分史」を紹介する機会があった。恥ずかしかったが、他の奨学生が涙ながらに語る肉親の死や少年時代の思い出に耳を傾けるうちにためらいはなくなった。さらに、幼くして両親を失った人、進学を希望していても家計が苦しくあきらめざるを得ない人がいることも知った。「自分よりも大変で苦しい経験をした人がいたんだ」と、気づきを得ると同時に「今、つらい思いをしている子供を一人でも多く助けたい」と感じた。

     あしなが学生募金は、奨学生や高校生ボランティアが活動を支え、今年で49年目。雑踏で街頭募金をしていると、人情や思いやりを感じることが多い。「頑張ってね」と激励してくれる高齢の女性や、お金を募金箱に入れて何も言わずニコッと笑顔で立ち去る男性など、十人十色だ。いつも感謝を込めて頭を下げている。

     あしなが育英会の職員で、首都圏エリアの学生支援を担当する瑞慶山(ずけやま)貴大さん(26)は、西村さんについて「いつも物腰柔らかで一生懸命。真剣に取り組む姿に元気をもらってます」と信頼を寄せる。「本人は長所を自覚していなくて、良い意味で鈍感。癒やされます」とも。

     これまで西村さんが、両親のいる家庭をうらやましく思ったことは多々ある。「もしあの時、父がいたら……」と考えたことも数知れない。でも、今はあしながの活動や仲間と出会えたのは、天国の父がつないでくれた縁と思って、自身の境遇と向き合っている。建築の道を志す一方、奨学金として自分が受けたバトンを次世代に引き渡すため、これからもあしながの“主翼”として募金活動を支えるつもりだ。【梅田啓祐】


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     現金書留の宛先は、〒100-8051東京都千代田区一ツ橋1の1の1、毎日新聞東京社会事業団。郵便振替は00120・0・76498。どちらも「母の日・父の日募金キャンペーン」と書き、可能ならメッセージを添えてください。各地域面にお名前と金額を掲載しますが、匿名希望の方は明記してください。問い合わせは社会事業団(電話03・3213・2674)へ。昨年は389万3549円が寄せられ、あしなが育英会や社会的養護の当事者支援団体にお届けしました。

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