メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

【お知らせ】現在システム障害のため一部の機能・サービスがご利用になれません
行政から配信されている不審者情報のメール画面

 新潟市の女児殺害事件で、容疑者が逮捕されて14日で1カ月。子どもを持つ保護者は不安を募らせている。事件との関連性は不明だが、子どもを対象にした性犯罪者には小児性愛障害が疑われるという。障害がどのようなもので、どんな子どもが狙われるのか。

     「(子どもが)殺されてから騒いでも遅い! うちの子どもは殺されなかったけど、だから良かったとは思わない」

     娘(当時7歳)が強制わいせつの被害に遭った静岡県在住の母親は語気を強める。7年前に起きた忌まわしい出来事。今も鮮明な記憶として脳裏に焼き付く。

     ●背後に隠れた被害

     --「お母さん、内緒にしてね。男の人におしっこみたいなの飲まされた」。帰宅直後にぼうぜんとした様子で床に座り込んだ娘は、母親に被害を打ち明けた。下校途中に男から「××さん知らない?」と声をかけられた。その後、無理やりマンションの隅へ連れていかれ、性器を口の中に入れられたという。驚いた母親はすぐに警察に通報し、男は逮捕された。だが、娘は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、14歳になった今も後遺症に苦しむ。

     こうした性犯罪に子どもが巻き込まれた場合、警察は「不審者情報」として地域に情報を発信し、注意を促している。しかし被害者の意向を受け、全容が配信されないこともある。今回のケースでは「不審者に声をかけられた」とだけ、発信してもらった。被害の詳細を伝えると娘が特定され、好奇の目で見られることを恐れたからだ。母親は、こう訴える。「『声をかけられた』という情報の背後には、隠された被害があると想像してほしい。声かけ事案だからと甘くみたら絶対にだめ。性犯罪者が地域にいる重要な証しだから警戒した方がいい」

     ●小児性愛障害とは

     子どもを狙った小児性犯罪者とは、どんな人なのか。

     これまで100人以上の治療に関わった「大森榎本クリニック」(東京都大田区)の斉藤章佳(あきよし)・精神保健福祉部長(精神保健福祉士)は「コミュニケーション能力が低く、ストレス耐性が低い」と指摘する。学齢期に女子児童からいじめられた経験から同世代の女性に恐怖感を持っていて、「自分に対して従順で抵抗しない子ども」に執着していく人が多いという。斉藤さんは「彼らは、相手を自分の思い通りに支配したいと考えて行動し、優越感や飼育しているような疑似体験から、余罪を重ねていく」と話す。性の知識が乏しいために被害を認識しにくい低学年の女児が狙われる傾向にあり、警戒心が強い子どもを避けるという。

     手口にも共通項がある。小児性犯罪者は「いかにばれずに、逮捕されずに繰り返すか」を考えているという。人目につかない場所を探すなど、かなり計画的に犯行に及ぶそうだ。ターゲットにした子どもに声をかける→つきまとう→連れ込む→性的行為をする。「成功体験」を積み重ね、徐々に問題行動をエスカレートさせていく。

     斉藤さんが関わった小児性犯罪者は、親が仕事で家にいない時間を入念に調べ上げ、留守番をしている子どもを狙って犯行に及んだ。斉藤さんは「一つ一つ情報を集めてゲームをクリアしていくロールプレーイングゲームのようなもの。声かけから始まる犯行のメカニズムを考えたら、早い段階から何かしらの介入を考えないといけない。性犯罪の中でも小児性犯罪は別格で、その常習性と衝動性は群を抜く」と説明する。

     ●対話でゆがみ自覚

     「大人になったら経験することを教えてあげるために性的接触を行っただけ」「ついついかわいがるつもりで一線を越えてしまった。決して傷つけようと思ったわけではないし、相手もそれを受け入れていた」--。斉藤さんによると、小児性犯罪者はこのように認知がゆがみ、身勝手な話をすることが多いという。

     法務省は2006年から、強制わいせつ罪や強制性交等罪などで有罪判決を受けた加害者らを対象に、「性犯罪再犯防止指導」のプログラムを刑務所などで導入している。再犯リスクなどに応じ、高密度(約8カ月)▽中密度(約6カ月)▽低密度(約3カ月)--のいずれかを受けさせる。性犯罪に至るまでのゆがんだ思考を自覚させ、再犯を抑止する力を身につけさせる。

     プログラムでは週に1~2回、1回100分のセッションをグループワーク形式で行う。性犯罪をしたくなった時の対処法などについて意見を出し合い、対話によって犯罪認識のゆがみを自覚させていくという。

     とはいえ、課題もある。

     プログラム導入にも関わった国際医療福祉大の小畠秀吾准教授(犯罪精神医学)は「国内では年間約6000件のわいせつ事件があるが、指導者となる職員や専門家の人数が限られ、治療の対象になるのは約500人ほど。受講待機者も多い」と明かす。

     ●孤独が再犯の契機

     では、どうすればいいのか。性犯罪を減らす鍵を握るのは、地域社会が出所した人を受け入れ、生活支援をしていくことにあるという。社会から排斥され、孤独感を抱えると、心が弱い出所者はストレスを高め、再犯のリスクが高まるからだ。

     カナダでは、出所した性犯罪者と市民ボランティアが「友だち」になり、身の回りのことや仕事のあっせんなどを手伝うサポート体制に力を入れている。社会から孤立させないようにした結果、性犯罪件数が減少しているそうだ。

     一方、韓国などでは再犯防止策として、一部の性犯罪者に全地球測位システム(GPS)付きの電子足輪を装着させて行動を監視している。「二重刑罰になっている」と人権の観点から問題視する意見も出ている。

     小畠さんは「彼らの多くは反社会的ではないが、『非社会的』な人間。どう更生させていくかは大事なことなのに議論が盛り上がらない。未来の被害者を守るためにも、考えないといけない」と話す。【坂根真理】


    性犯罪再犯防止指導プログラムの例

    ・事件につながった要因を検討させる

    ・再発を防ぐための介入計画(自己統制計画)を作成させる

    ・認知が行動に与える影響について理解させる

    ・対人関係を築くために必要なスキルを身につけさせる

    ・感情をコントロールするために必要なスキルを身につけさせる

    ・他者に共感する力を高めさせる

    ・知識やスキルを復習する

    ※法務省ホームページから抜粋

    ※高密度・中密度・低密度に応じた指導内容を設定


    小児性愛障害

     一般的に性的対象とみなされない若年者に対し、性的欲求や興奮を覚え、性的行為を繰り返す障害。米精神医学会のガイドラインによると、診断基準は「少なくとも6カ月間にわたり、思春期前の子ども、または複数の子ども(通常13歳以下)との性行為に関する空想、性的衝動、または行動が反復する」など。警察庁によると、12歳以下の子どもに対する強制わいせつ事件は2016年に893件、強姦(ごうかん)事件は69件だった。

    コメント

    投稿について

    読者の皆さんと議論を深める記事です。たくさんの自由で率直なご意見をお待ちしています。

    ※ 本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して毎日新聞社は一切の責任を負いません。また、投稿は利用規約に同意したものとみなします。

    利用規約

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 日産会長逮捕 ゴーン神話「数字の見栄え良くしただけ」
    2. 日産 ゴーン会長を解任へ 「会社資金を私的に流用」
    3. 日産会長逮捕 再建神話、地に落ち 社員に衝撃と動揺
    4. 暴行容疑 元レスラー長与千種さんの髪つかむ 男を逮捕
    5. 高校野球 練習試合で頭に死球、熊本西高の生徒が死亡

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです