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社説

自然遺産の推薦取り下げ 課題の解決急ぎ再挑戦を

 世界自然遺産登録を目指していた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄県)について政府は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦を取り下げた。内容を見直し、再挑戦する。

     現地調査した国際自然保護連合(IUCN)は、沖縄島北部にある自然豊かな米軍北部訓練場跡が推薦地に含まれていないことなどを疑問視し、登録延期を勧告していた。

     関係者の間では、今月下旬から開かれるユネスコ世界遺産委員会で逆転登録を目指すべきだとの意見もあった。だが、科学的な評価を逸脱した働きかけは国際的な批判を招きかねず、取り下げは妥当な判断だ。

     推薦地は4島合わせて約3万8000ヘクタール。政府は、大陸から島々が分離する過程で生物が独自の進化を遂げた貴重な生態系であることと、ヤンバルクイナなど希少な固有種が生息し、生物多様性に富むことの2点を理由に、推薦に踏み切った。

     IUCNもそうした価値は認めたが、推薦地が4島の24区域に分断されており、長期的な生物多様性の保全には疑問があると指摘した。

     北部訓練場は2016年末に敷地の約半分の4000ヘクタールが日本側に返還された。近く、国立公園に編入される予定だ。推薦地に組み入れ、分断の解消につなげたい。

     推薦地は陸域だけだが、生物多様性の保全の観点からは、海域や沿岸域も含めることを検討すべきだ。

     IUCNは、推薦地の生物多様性に対する脅威として、在来種を餌にする野ネコやマングース、観光の影響などを挙げている。特に西表島で観光客が急増していることについては、名指しで触れている。

     遺産登録が環境破壊を招いては本末転倒であり、観光客の適切な受け入れ計画づくりは急務だ。

     日米両政府は推薦に際し、未返還の北部訓練場を含む沖縄島北部で外来種対策などに取り組むことに合意したが、IUCNの勧告が出るまで明らかにしていなかった。再挑戦への市民の理解を得るためにも、両政府の適切な情報公開が欠かせない。

     世界遺産の目的は後世に残すべき普遍的価値の保護だ。推薦の取り下げは、4島の貴重な自然を守るための課題を解決する時間を確保するためだと、前向きに受け止めたい。

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