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余録

剣豪、宮本武蔵がみごとなキッカーだったとの逸話が…

 剣豪、宮本武蔵(みやもとむさし)がみごとなキッカーだったとの逸話がある。武蔵が筑前の筥崎宮(はこざきぐう)に参詣したおり、楼門の外から蹴り入れた鞠(まり)を拝殿前で片膝ついて受けとめた。それを見た蹴鞠の達人が感心したというのである▲武蔵は兵法の極意を記した「五(ご)輪(りんの)書(しょ)」でも蹴鞠をする人の目配りを例に引いている(池修(いけ・おさむ)著「日本の蹴鞠」)。ところでこの武蔵、巌(がん)流(りゅう)島(じま)の決闘にわざと刻限に遅れて行ったのは武芸者同士の立ち合いとしてひきょうという人もいる▲遅刻が史実かは疑問視されているが、命がけの武蔵の兵法が後の世の剣術の美学と違うのも当然だろう。ではこちらのサムライの蹴り回しはどうか。海外メディアで物議をかもしたサッカーW杯日本代表の対ポーランド戦終盤だった▲2大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めたこの試合、終盤は1点負けながら時間稼ぎのパス回しを続け観客のブーイングを浴びた。失点や警告を避け、同時進行の試合でセネガルの得点がなければ1次リーグ突破が成るからだった▲チームにすればルールにもとづく合理的戦術だろう。だが皮肉なのは、日本の勝ち抜きを決めたのが今大会から導入されたフェアプレーポイントだったことだ。海外のメディアが「これがフェアプレー?」と突っ込んだのも仕方ない▲日本のファンの間でも甲論乙駁(こうろんおつばく)があろう成り行きだが、W杯大会でこんな論議ができるのも幸せのうちというべきか。次は堂々たるベスト8入りによってサムライブルーの真価を世界に示してほしい。

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