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アステロイド・デー

天体の地球衝突の脅威は届いているか

天体の地球衝突を事前に防ぐためには小惑星探査が欠かせないと考えられている=アステロイド・デー提供

「6月30日」世界各地で啓発イベント

 探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウの本格的な探査を始めました。リュウグウ到着時の記者会見では、英国のギタリストのブライアン・メイさんからのお祝いメッセージの紹介とともに、メイさんが提唱する「アステロイド・デー(小惑星の日)」について説明がありました。はやぶさ2のリュウグウ到着から3日後の6月30日が、アステロイド・デーです。はやぶさ2の探査がアステロイド・デーとどのように関係があるのか、アステロイド・デーを考える意味は何かについて、この活動を推進する日本惑星協会の井本昭事務長から原稿が届きました。

アステロイド・デーの提唱者たち。後列右から2人目がブライアン・メイ氏。前列左は2018年に亡くなった英国の理論物理学者、スティーブン・ホーキング博士=アステロイド・デー提供

日本惑星協会・井本昭事務長の寄稿

 4度目となる今年の「アステロイド・デー」では、主催者側によると世界各地で数千もの自主企画イベントが開催されます。わずか数年で大きく成長したキャンペーンとなりました。既にご存じの方もいると思いますが、アステロイド・デーは天体の地球衝突の脅威について考える日で、1908年にロシア・シベリアに直径約60メートルの小惑星が落下して起きた「ツングースカ大爆発」の日である「6月30日」が国際アステロイド・デーとされています。

 日本国内では、6月27日に探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウへ到着したのに合わせ、惑星探査ファンたちがそれぞれ盛大に祝福しました。ここまで順調にきたミッションです。これからの探査がとても楽しみです。

 はやぶさ2が小惑星リュウグウを撮像した際には、アステロイド・デー・キャンペーンの提唱者である英国のロックアーティストで天文学者のブライアン・メイ氏からも祝意が届けられました。リュウグウは、地球に比較的近い軌道にある「地球近傍小惑星(Near Earth Object 、NEO)」です。NEOを探ることは、万が一、同じタイプの小惑星が地球に衝突した場合、どのような影響が想定されるかを検討する貴重な材料にもなります。だから、はやぶさ2などのNEO探査は、私たちアステロイド・デー・キャンペーンを啓発する側にとっても深い意味を持つプロジェクトと言えます。

ブライアン・メイ氏からはやぶさ2プロジェクトチームに届いたメッセージ(左画面)を紹介する吉川真・はやぶさ2プロジェクトミッションマネジャー(右端)=宇宙航空研究開発機構相模原キャンパスで2018年6月27日、永山悦子撮影

 一方、天体の地球衝突の脅威は日本国民に届いているでしょうか。

 アステロイド・デー・キャンペーンに日本が公式に参加して3年目となります。はやぶさ2ミッションマネジャーを努める吉川真氏が日本側のキーパーソンとして年中奔走しているものの、大きな盛り上がりを得るには至っていません。日本スペースガード協会(天体衝突から地球を守るために地球衝突の可能性がある天体の発見・監視に取り組む)とともに、私たち日本惑星協会も国内での啓発活動を進めていますが、思い描く成果は得られていません。

 「天体の地球衝突の脅威について地球に住む人々への啓発キャンペーン」であるアステロイド・デーですが、日本は古くからその脅威を身をもっては体験していないことが影響しているのでしょうか。実際、日本にはいくつかクレーターは存在するものの、古代の歴史にはそうした記録はほとんどなく、小さな隕石(いんせき)の「襲来」が多数を占めています。

 世界各国の大きな盛り上がりはなぜなんだろう。どのように啓発されてきたのだろうか。日本以外の国々は、そうした天体の脅威を目の当たりにした経験があるのだろうか。そんなことを考えました。

 近年では、2013年にロシアで起きたチェリャビンスク隕石の落下や、100年あまり前のツングースカ大爆発などがあります。他にも、砂漠地帯や海洋上への隕石落下を観測した記録はありますが、一般市民が知り及ぶ脅威としての天体衝突は、上に述べた程度ではないかと思われます。さらに調べれば、多数の微小天体の地表到達が見つかるとは思いますが、人への被害はまれで、世界各国の人々も「実際に天体衝突の脅威を身近に感じた」という経験はないと思われます。

アステロイド・デーのイベントに参加するブライアン・メイ氏(左)=アステロイド・デー提供

 私が、このように感じるのは、「脅威の警鐘」を届けることが容易ではないことへのもどかしさのせいなのかもしれません。

 アステロイド・デー・キャンペーンを実施する視点からは、「天体が地球に到達することは、いつ起きても不思議はない」ということになりますが、今月起きた大阪での震度6弱レベルの地震のように、日本では、多くの人が日ごろ起きる身近な自然災害におびえており、「天体の地球衝突」など「何万年に1回くらいの脅威に過ぎない」と思っても仕方ないのかもしれません。

 天体の地球衝突について、細かな数字はありませんが、「天体衝突で人的被害が発生する確率は、飛行機事故で被害に遭う確率よりも大きい」という想定話があります。飛行機に搭乗して事故に遭うよりも、地球に到達する天体の方が脅威だというのです。これは、直径10キロ以上の天体が地球に到達する頻度(過去の衝突クレーターなどから導いた数字と思われます)と、飛行機の搭乗者数からはじき出した試算だと考えられます。このように聞くと、少しは身近な話のように思えませんか。

 はやぶさ2の先代の探査機はやぶさが探査したイトカワや、はやぶさ2が挑もうとしているリュウグウはNEOです。そのほかに、「潜在的に危険な小惑星」を意味するPHA(Potentially Hazardous Asteroid)と呼ばれるものもあります。このPHAは、NEOよりも地球軌道と交差する距離が近く、750万キロ程度(月までの距離の約20倍)以下のものを指します。こうした天体の地球接近は非常に頻繁に起きているのですが、今のところ、サイズが小さく、地球にも衝突していません。

 しかし、たとえ99.999%の天体を発見して、その軌道が地球に衝突しないものだと確認できたというつもりになっても、潜在的に宇宙に存在する天体の総数は非常に大きく、残る未確認の天体は相当な脅威として残っているとみなすべきではないでしょうか。99.999%が地球にとって安全であれば残りも同じはずだ、というのは大きな勘違いです。過去に起きた天体の地球到達数を含めてみれば、それらが脅威となる確率はぐっと上がります。

 いつの日か、イトカワやリュウグウが他の天体の重力による影響を受けて、地球に一層近付き、PHAと呼ばれる日がくるかもしれません。それどころか、いまだに発見されていない比較的大きな規模の未知の天体が、突然我々の地球軌道と交差する場面が訪れる可能性も否定できません。

 誰かが警鐘を鳴らし続けなければ、その時に必要な対策の準備すらできません。昨年日本で開かれた「プラネタリー・ディフェンス・カンファレンス(地球防衛会議)」のような研究者による天体衝突に対する「備え」は、力強く頼もしい限りではありますが、私たち一般市民がすべきこと、できることはいったい何なのか、そもそも天体から地球を守るということの意味は何か--。アステロイド・デー・キャンペーンは、こうしたことを皆さんに問い掛ける「メッセンジャー」のようなものなのです。

 今年は少し厳しい内容になったかもしれませんが、天体の地球衝突の脅威を認識していただきたいという思いから、アステロイド・デーの意味をまとめてみました。はやぶさ2が小惑星探査をしている今、一人でも多くの皆さんがはやぶさ2の記事やニュースを見ているときに思い出すきっかけになればと願っています。これを読まれた皆さんの頭の隅に「天体の地球衝突」という言葉だけでも残れば、私の願いはかなりかなうことになります。

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