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はやぶさ2

「まさか」科学的に意外だったリュウグウの姿

探査機はやぶさ2がリュウグウ到着直前に撮影した22キロ上空からの姿。全面に岩塊が広がっている=宇宙航空研究開発機構、東京大など提供

到着画像を分析した関係者の声

 探査機はやぶさ2が打ち上げから3年半かけて到着した小惑星リュウグウ。その形にプロジェクトチームは驚いた。それは「度肝を抜かれた」というよりは、「あれ? まさか?」という驚きだったようだ。「そろばんの玉のよう」ともされる形は、なぜ関係者の意表を突いたのだろうか。関係者の声からまとめた。【永山悦子】

 「ふーん。リュウグウ、そうきたか」

 はやぶさ2の可視光で撮影するカメラ「光学航法カメラ(ONC)」の開発に携わり、ONCが撮影した画像を分析してきた杉田精司・東京大教授の感想だ。先代のはやぶさは事前に目的地の小惑星「イトカワ」のレーダー観測ができていたため、「細長くメイクイーンのよう」とおおまかな形が分かっていた。しかし、リュウグウは事前に地球へあまり近付かず、レーダーによる観測ができなかった。大型望遠鏡を使った観測から「ほぼ球体で、自転軸は傾いている」という推測が出され、それが最も確からしく思われていた。

光学航法カメラで撮影された地球とリュウグウ。地球は、地球スイングバイの直後(2015年12月4日)に撮影。リュウグウは2018年6月21日に撮影したデータを地球撮影と同じ条件にした場合の画像=宇宙航空研究開発機構、東京大など提供

 はやぶさ2のプロジェクトチームは、到着前に到着してからの運用を想定した訓練を重ねた。杉田さんら観測チームの科学者たちも参加し、想定を基にした架空の小惑星について、どこを重点的に観測するか、着陸をどのようにするかなどを何度も検討を繰り返し、リュウグウに着いてからの運用の手順を「最適化したつもり」だった。

リュウグウの色について説明する杉田精司・東京大教授=相模原市で2018年6月27日、永山悦子撮影
米探査機オシリス・レックスが目指す小惑星ベンヌの想像図=ダンテ・ローレッタ氏提供

 しかし、目の前に現れたのは、コマ回しのコマのような形の小惑星。自転軸はほぼ垂直だった。杉田さんは「球状以外の選択肢も残してはいたが、多くのメンバーは『準備してきたのとは違ったな』という思いを持ったと思う。そのせいか(リュウグウの形が見えてきたとき)『やったー』というより『ふーん』という感じだった」と振り返る。リュウグウは自転の速さが1周7.6時間、直径約900メートルだが、一般的なコマ形小惑星の自転は3時間前後とより速く、サイズももう少し小さめだ。「リュウグウでコマ形はありえない」と考えられ、「球状」という想定がしっくりいくデータだった。「リュウグウへ着けば期待を裏切られるだろうと思っていたが、さすがにコマ形は想像できなかった」(杉田さん)

 はやぶさ2プロジェクト関係者も、口々に「想定外の結果」への感想を述べている。吉川真ミッションマネジャーは「科学的にかなり意外だった」、はやぶさ2の科学的探査を統括する渡辺誠一郎・名古屋大教授も「こういう形だとは予想していなかった」。津田雄一プロジェクトマネジャーは「リュウグウはカクカクした印象。大きさが想定通りだったことに非常に驚いたら、渡辺(誠一郎)先生から『サイエンスへの冒とくだ(科学的には十分に精度良く推測できる、との意味)』と言われた」。津田さんは形などの想定は「きっと外れるに違いない」と覚悟を決めていたようだ。そして、先代のはやぶさを率いた川口淳一郎・宇宙航空研究開発機構(JAXA)シニアフェローはトラブルなく完走した往路を高く評価しつつ、リュウグウの第一印象について、「ちょっと面白くなかったですね。他にもある形というのは、ちょっとね。もう少し衝撃的な形をしていてくれるかなと思ったんですが……」と語った。

リュウグウの岩塊について説明する渡辺誠一郎・名古屋大教授=相模原市で2018年6月27日、永山悦子撮影
二つのカクテルグラスを組み合わせ、「リュウグウがこんな形だったとは意表を突かれた」と話す杉田精司・東京大教授=東京都文京区本郷で2018年6月、池田知広撮影

 取材の際、杉田さんはおもむろにカクテルグラス二つを取り出した。「こうやって二つのグラスの口を合わせたような形です」と説明した。「この形を前向きにとらえれば、米国の探査機オシリス・レックスが目指す小惑星ベンヌととても似ている。さらに、その後の欧米の探査機が目指す小惑星ディディモスも同じような形。直後に二つの探査が続くことを考えると、コマ形小惑星の世界に『私たちが先べんを付ける』ことになる。最初は全然違うタイプの星へ行くつもりだったので、『ちょっとなあ』と感じるところもあったが、頭を切り替え、後から来る探査機に『はやぶさ2、ありがとう』と思われるような探査をやりたい」と話した。

 一方、到着までの観測で、形だけではなくリュウグウの素顔がだいぶ見えてきた。科学者たちにとっては「本当に幸せな瞬間が続いている」(渡辺さん)という。

 リュウグウの色は、イトカワに比べてかなり暗く黒っぽいことが分かった。はやぶさ2が撮影した地球の画像と色合いを合わせてみると、かなり黒い色になった。地球からの観測では光の反射率がイトカワより低かったが、その観測と一致する結果だった。理由は、リュウグウが炭素を多く含むタイプ(C型)の小惑星だからだ。C型小惑星は「消し炭のような天体」と考えられており、まさにその通りの姿をしていることが確認されたといえる。炭素は生命のもとになった物質と考えられており、はやぶさ2の「生命の起源に迫る」という探査の目的に一歩近付いた。

先代の探査機はやぶさが訪れたイトカワも岩塊が多かったが、一部、なだらかな地形もあり、そこへ着陸した=宇宙航空研究開発機構提供

 また、リュウグウ全面で多数の岩塊(ボルダー)が確認された。はやぶさ2は機体上部の左右に太陽電池パネルがあり、1メートルを超える障害物があるところに着陸すると、パネルがぶつかって壊れる恐れがあり、そのような障害物のない地点を探して着陸しなければならない。だから、小惑星全体に広がる岩のデコボコは、探査機の着陸を計画する運用メンバーにとっては心配のタネだ。

 津田さんはリュウグウ到着時の記者会見で、「表面のデコボコによって難易度が高くなることは織り込み済みだが、それにしても難しそう。神様はそんなに優しくないんだな、と思った」と明かした。佐伯孝尚プロジェクトエンジニアも「どこもかしこも岩が見える。(メンバーの間では)『さーて、どこに降りましょうか』と話している。事前に実施した訓練よりも格段に難易度が高い。訓練のときも、着陸場所について科学者の皆さんと白熱した議論になったが、もっと議論は白熱しそうだ」と悩みを明かした。

 科学的には、岩塊の多さは逆に興味深いという。リュウグウのように小さく重力が極めて小さな天体では、外から岩が降ってきたり衝突したりしても、そのまま反動で飛び出してしまい、リュウグウのように多くの岩が残ることは考えにくい。だから、渡辺さんは「(多くの岩は)リュウグウが経てきた歴史や、元になった母天体の起源にかかわるかもしれない」と話す。

 杉田さんは到着時に開かれた記者会見で、「リュウグウの姿が見え、姿が分からず議論してきた準備段階からは局面が変わった。リュウグウは真ん中(赤道部分)が白い筋のように見える。私はそれは『竜宮城の玉手箱のひも』ではないかと思う。リュウグウのなぞを解けば、このひもがほどけて、玉手箱の中にある太陽系の起源にかかわる新たな事実が分かるのではないか。理学研究者の力の見せどころが始まる」と話した。

 プロジェクトは今後、7月末にかけてリュウグウの上空20~5キロから隅々まで観測し、リュウグウの立体模型を作る。そこに、どこにどういう物質が分布しているのか、どういう地形的な特徴があるのかという情報を盛り込み、8月末までに、科学的な意義や探査機の安全性などを考慮して、着陸場所や着陸機を降ろす場所などを決める。いよいよリュウグウ探査が本格化する。

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