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我らが少女A

/332 第9章 12=高村薫 田中和枝・挿画監修

 東町のバス道で上田朱美の自転車と遭遇した小野雄太も、あいつ朝帰りかと一瞬思ったが、数秒後には遅刻しそうだと気づいて幼なじみの姿は背後に飛び去ってしまった。また浅井忍も、ウィンドブレーカーのフードを目深に被(かぶ)った朱美とすれ違った瞬間、耳元で『太鼓の達人』の赤と青の音符がちょっと飛び跳ねたが、それはトロデーン城へ急ぐ足に速やかに蹴散らされてしまい、代わりにステッキを振り回す魔女が再び瞼(まぶた)に降りてきたのだった。もっともその数分後、忍は西武多摩川線のトンネルの手前まで来たところで、凍結した路面でスリップして転倒し、氷の刃の一撃を肘や肩に食らって思わぬダメージを受けた。それが回復しないまま、いったん敗退したので、結局野川公園には行かずじまいになったのだ。

 そのトロデーン城では、起きだした栂野(とがの)雪子が勝手口の外にゴミ袋をだし、氷の膜かと思うほどの…

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