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読書日記

著者のことば 広野真嗣さん かくれキリシタンの今

 ■消された信仰 広野真嗣(ひろの・しんじ)さん 小学館・1620円

     副題は「『最後のかくれキリシタン』--長崎・生月島(いきつきしま)の人々」。世界遺産となる「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」のドキュメンタリーかとも思うが、さにあらず。その遺産から黙殺された信仰に光を当てた作品だ。

     島に関心を持ったきっかけは、「かくれキリシタンの聖画」という小学館の画集を見たことだ。1960年代の島で撮影されたもので、キリスト教信仰とは思えないものもあった。例えば、「洗礼者ヨハネ」がちょんまげをつけている。「この信仰をみてみたい」と、取材を始めた。子どものころプロテスタントの洗礼を受けたものの「ペーパークリスチャン」と自認しているが、キリスト教に関する知識は役立ったはずだ。

     かくれキリシタンに関する研究書を、60冊ほど集めた。分厚い先行研究がある中で、「1冊の本にまとめることができるのか」とも思った。「研究的な新発見をしようとしたら荷が重かったでしょう。一方で生きている当事者たちの今を切り取るという、ルポルタージュがあり得るのでは」と、取材を進めた。

     長崎県が、世界遺産を目指すにあたって二つのPRのパンフレットを作ったことが分かった。2014年に作ったものには、生月島を中心とした「平戸の聖地と集落」について、信仰の伝統はかくれキリシタンによって大切に守られている、と明記されていた。ところが17年製作のパンフでは、その信仰は「現在ではほぼ消滅している」と、正反対の記述になっている。

     なぜ、こうなったのか。広野さんは長崎県や関係者への取材を重ねる。「(同県が)途中までは道具として使っていたが、途中から『載せない方がいい』と判断した」様子が明らかになってゆく。禁教が終わってもあえてカトリックに回帰しなかった生月島の歴史が興味深い。

     75年生まれ。鋭い着眼と取材で生まれた作品は、第24回小学館ノンフィクション大賞を受賞した。島の信徒は、現在推定で300人。90年代から大きく減ったという。長い間守り継がれてきた独特の信仰と生活、地元の言葉を記録した、オーラルヒストリーとしても貴重だ。<文と写真・栗原俊雄>

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