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ニッポンの食卓

第3部 それって健康?/3 「美肌にコラーゲン」検証不足

人気商品の「コラーゲンしゃぶしゃぶ」。豚骨などを煮込んで冷やした固形物に熱を加えると「コラーゲンたっぷり」の特製スープになる=東京・銀座の春夏秋豚で

 「肌のはりや潤いを保つためには『コラーゲン』を食べるといい」。こんな話をよく耳にする。わざわざコラーゲンが豊富な食材を選んだり、高価なサプリメントを摂取したりする人も少なくない。一方で「口からとっても効果はない」という情報に触れたことがある人もいるだろう。コラーゲンを飲んだり食べたりすることに、意味はあるのか。

     「効果を100%信じているわけではないけど、なんとなくお肌にいいイメージ。『コラーゲンたっぷり』なんて聞くと、やっぱり期待したくなりますよね」。6月下旬、東京・銀座の鍋店「春夏秋豚」で、会社員、若目田真弓さん(25)はそう言って、看板メニューの「コラーゲンしゃぶしゃぶ」を楽しんでいた。この店は「豚骨などを煮込んだコラーゲンたっぷりのしゃぶしゃぶスープ」が売りだ。市川知治店長によると、美容に関心の高い女性客が夏でも多く訪れるという。

     コラーゲン豊富な食材としては他にも、豚足や鶏手羽、フカヒレ、魚の煮こごりなどが知られる。20年ほど前からブームになり、ドリンクやゼリー、錠剤タイプのサプリメントも次々と登場。調査会社の富士経済によると、「美肌効果」をうたう健康食品の市場規模(2017年見込み値)は1000億円を超え、多くはコラーゲン成分の摂取を目的としている。

     そもそもコラーゲンとは、たんぱく質の一種。人の体を構成するたんぱく質の約30%を占め、皮膚や骨、軟骨、血管や腸といったあらゆる臓器の構成要素として、細胞をつなぐ役割などをしている。皮膚のコラーゲンが不足すると、肌の弾力が失われ、しわやたるみの原因になる。では、食べれば、不足した肌のコラーゲンを補えるのだろうか。

     ●「食で補給」の誤解

     東京農工大硬蛋白質利用研究施設長の野村義宏教授(農学)は「誤解している人が多いようですが、結論から言うと、食べたコラーゲンがそのまま体の中のコラーゲンになることはありません」と説明する。コラーゲンを含めたたんぱく質は、さまざまな種類のアミノ酸が鎖状に連なってできている。たんぱく質を口からとると、体内でばらばらのアミノ酸、またはアミノ酸が数個くっついた「ペプチド」に分解され、一部が新しいたんぱく質に作り替えられる。

     しかし、飲んだり食べたりすることが、決して無意味というわけではないようだ。「近年の複数の研究で、食べて分解された後に残る『コラーゲンペプチド』が、新しいコラーゲンの生成に重要な役割を果たしていることが明らかになってきたのです」(野村教授)

     コラーゲンは、アミノ酸が1000個連なってできた鎖3本が、らせん構造を取っている。口から摂取したときに、これが最小単位のアミノ酸だけでなく、ペプチドとしても血中に吸収されることが確認され始めたのは、05年ごろからだ。

     その後の研究で、皮膚の細胞にペプチドが接すると、細胞が活性化し、コラーゲンやヒアルロン酸を作り出す能力が高まることが分かってきた。詳しいメカニズムはまだ分かっていないが、ペプチドが細胞に対し「コラーゲンなどを作れ」という指令を出すと考えられるという。

     ●皮膚の細胞を刺激

     化粧品・健康食品のファンケル(横浜市中区)と横浜市立大の共同研究チームは昨年、特定の配列のコラーゲンペプチドを口から摂取すると、血中から皮膚にそのままの形で移行することをマウスで確認したという論文を、米科学誌に発表した。ファンケルの矢崎美里研究員は「皮膚に移行したペプチドが皮膚中の細胞を刺激することにより、美肌効果が期待できると考えています」と話す。

     野村教授によると、口から摂取後、血中にペプチドが吸収されるまで約30分。指令を受けた細胞で、新しいコラーゲンは約12時間後から生成が始まると考えられる。このことから野村教授は「『食べた翌朝にお肌ぷるぷる』という一部の人の実感は、ウソではないと私は考えます」。

     こうした中、さまざまなメーカーがより効率的にコラーゲンを摂取できる商品の開発を進めている。最近では、体に吸収されやすいように分子の大きさを小さくした商品が主流だ。ただ、野村教授は「どんな形がより体に吸収されやすく、細胞の活性を高めやすいか、まだ分かっていません。体質や肌のダメージの状態によっても違うのです」と指摘。基本的には通常の食生活でも賄えるので、サプリメントを摂取する場合は、1カ月程度試して効果を実感できなければ、中断することを勧めているという。

     ●過剰な期待は禁物

     コラーゲンは、美肌効果だけではなく、骨粗しょう症や関節の痛み、じょくそう(床ずれ)の改善などについても研究が始まっている。

     一方で、過度な期待は禁物だ。健康食品の安全性や機能性について情報提供をしている国立健康・栄養研究所(東京都新宿区)は、コラーゲンについて「経口摂取した場合の『ヒトでの有効性』については現時点で信頼できるデータが十分に見当たらない」としている。

     同研究所の石見佳子シニアアドバイザーは「エビデンス(科学的根拠)がしっかりしたものから、そうでないものまでが混在しており、さらなる研究報告の蓄積が必要です」と指摘する。

     また、体の中でコラーゲンを作るにはビタミンCが必要になるなど、健康維持にはさまざまな栄養素が不可欠だ。「何かの効果を期待してコラーゲン摂取にこだわるよりも、バランスよく食べ、適切な運動、睡眠といった生活習慣を見直すことが大切でしょう」(石見アドバイザー)。さらに、たんぱく質はアレルゲンになることがあるため、アレルギーのある人はコラーゲンの摂取に注意が必要だ。【曹美河】=次回は18日に掲載

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