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はやぶさ2取材日記

デス・スター、ソロモン、蛍石…リュウグウの姿に自分の思いダブらせ=池田知広

米ニューメキシコ州産の青い蛍石=2018年7月13日、池田知広撮影
高度20キロから6月30日に撮影された小惑星リュウグウ=JAXA、東大など提供

 自然界には人工物と見まがうような形の物体が多く存在している。私が魅力にとりつかれている鉱物結晶もその一つ。中でも蛍石は、映画「天空の城ラピュタ」に出てくる巨大な飛行石のような正八面体で美しい。特定の方向に割れやすいのでこんな形になるのだが、時折、10年近く前に買ったブルーの代物を眺めては心を鎮めている。

 探査機はやぶさ2が、目的地のリュウグウまで35キロに迫っていた6月23日。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の相模原キャンパスで、運用の佳境を迎えていた津田雄一プロジェクトマネジャーが記者説明会に姿を見せた。津田さんは運用について緊張した面持ちで言葉を選んでいたが、徐々に明らかになってきたリュウグウの姿に話が及ぶと、表情をほころばせてこう語った。

 「最初は地上の観測通り丸く見えたんですけど、だんだん四角くなって……。ピラミッドを二つくっつけたような蛍石の形になり、きれいだなと思いました」

 津田さんの口から蛍石という言葉を聞いて、私は胸を躍らせた。その5日ほど前に出てきたリュウグウの画像を見て、自分もそう思っていたからだ。一時は、到着時の記者会見に家から蛍石を持って行こうとも考えた。

 ただ、その形は長く維持されなかった。津田さんは続けた。

 「さらに近づいていくと、そんなにカクカクしてなくて、そろばんの玉のような形でした。クレーターだったり、岩がごつごつあったり、どんどんと表情が変わってくるので、このデータを見る時だけはわくわくしています」

 到着直前のこの時期は、連日リュウグウの新しい画像が提供され、その度に原稿でどう表現するか頭を悩ませた。結局、科学的には「コマ形」と呼ばれる形だったが、正月に回すようなコマは上面が平らになっていて、どうもしっくりこないような気もした。私も「そろばんの玉」という言葉を使った。

 JAXAの研究者やエンジニアの間では、リュウグウの姿を宇宙要塞(ようさい)に重ねる人が多かったようだ。映画「スター・ウォーズ」で2度にわたって派手に爆破されたデス・スター。アニメ「機動戦士ガンダム」のソロモンに例える声もあったという。ソロモンは地球連邦軍の占領後、「コンペイ島」に改称された。そういえば、金平糖に例えたメディアもあった。

 リュウグウは、みんなが見たいように見えたのだった。人類が初めて探査する星。なのに、世界中の人たちがほぼ同時にその姿を見て、あれやこれやと論評できる。自分の好きなモノとダブらせたくなるのも当然だ。

 探査機は6月27日、リュウグウから高度20キロの地点に到着した。記者会見の会場で、JAXAの吉川真ミッションマネジャーは、誰かが用意したそろばんを手に笑顔を見せていた。津田さんは、また蛍石の話をしていた。やっぱり自分の蛍石を持って来ればよかったと、少し後悔した。

 蛍石は紫外線を当てると青紫色に蛍光する特徴がある。観測が始まったばかりのリュウグウには、どんな秘密が隠されているだろうか。思いもよらなかった、新しい表情が見られるのを楽しみにしている。【科学環境部・池田知広】


 探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウへ到着し、探査が本番を迎えています。その現場を取材する記者たちが、記者会見や手に汗握る運用の裏話、プロジェクトメンバーへのインタビューのこぼれ話、宇宙探査への思いなどをつづります。

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