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社説

NATOにトランプ氏圧力 危険水域に近い米欧対立

 米欧の同盟関係に亀裂が生じている。トランプ米大統領がまたしてもかき回している格好だ。

     北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でトランプ氏は、加盟国が国防費負担を国内総生産(GDP)比2%以上とする共通目標について、達成時期を早めるよう圧力を加え続けた。

     達成時期は2024年までと既に決まっているが、加盟29カ国のうち米英など5カ国しか達成していないのが気に入らないらしい。会議では「4%への引き上げ」を突然要求したり、現行の2%目標維持で落ち着いた後もツイートで「今すぐ払え」と怒りを示したりするなど、周囲を当惑させた。

     また、GDP比約1・2%にとどまるドイツをやり玉に挙げ、増額を求めるとともに、ドイツがロシアから天然ガスをひくパイプライン計画を批判し、「ドイツはロシアの捕虜だ」と断じた。同盟国に対する侮辱的な発言だ。

     トランプ氏のNATOへの懐疑的な姿勢は今に始まったことではない。昨年5月の首脳会議でも各国の国防費負担に対する不満から、NATOの根幹である集団安全保障への関与を表明せず、メルケル独首相らを落胆させた。

     今回、共同宣言では集団安全保障を再確認はしたが、米欧はぎくしゃくとした関係に終始した。トランプ氏の圧力に対し欧州側が反感を募らせ、米欧の対立は危険水域に近づく恐れがある。

     NATOは旧ソ連の脅威に対抗し発足した軍事同盟で、冷戦終結後は周辺の紛争の予防に重点を移した。だがイラク戦争を境に歩調は乱れ、現在その役割は見えにくくなり、存在意義をめぐる模索は続いている。

     そんな時だからこそ、米国は率先して今後の役割と方向性について指針を示すべきだろう。歴史的に米国が主導し、世界の平和と秩序の構築に貢献してきた枠組みだ。トランプ氏一人の判断で、それも他国の国防費にこだわるだけで、身内の団結を乱すのは愚かしい。

     国防費の大幅増額という要求は、日本にとってもひとごとではなかろう。日本へのトランプ氏の圧力が、さらに強まることへの懸念はくすぶりそうだ。

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