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継がれぬ遺志

「マンデラ後」の南ア/上 「空き地に住んで何が悪い」 不法居住区に220万世帯

半年ほどの間にできたスクオッターキャンプ。もとは空き地だったという=ヨハネスブルク南郊のロウリーで2018年6月19日、小泉大士撮影
南アフリカ・ロウリー

 見渡す限り広がる小屋、小屋、小屋……。どれも廃材やトタン板で作ったものだ。その数は数千戸。「昨年11月には数十戸だったのに、あっという間に広がった」。南アフリカの最大都市ヨハネスブルクの南約50キロのロウリーにあるスクオッターキャンプ(不法居住区)。小高い丘の上からセブンティーン・ラックスさん(56)は、小屋が密集する様子を指さしながら話した。

     南アでは、人口の1割程度の白人が多数派の黒人らを差別し支配するアパルトヘイト(人種隔離)体制が続いた。

     1990年代のアパルトヘイト終結と民主化によって白人農場主が逃げ出し、広大な所有地が放置された。その一部に低所得の黒人の誰かが住みついた。口コミで「住めそうだ」との情報が広がる。すると、そこに多くの黒人たちが押し寄せ「キャンプ化」する。そんな事態が相次いだ。

     ラックスさんが住むのは約5000人の合法的な居住区。だが、道を隔ててできたキャンプの人口は半年でその数を上回った。

     キャンプに住むタビソ・ムベレさん(32)は今年2月、ヨハネスブルク南郊のタウンシップ(アパルトヘイト体制下で黒人らの居住区に指定された地域)のソウェトから移った。キャンプのリーダーに「登録料」として700ランド(約6000円)を渡せば、土地代などを支払う必要はない。

     南ア統計局によると、民主化直後の96年、スクオッターキャンプで暮らす世帯数は全土で約63万世帯だった。それが2017年には約220万世帯にまで膨れ上がった。全世帯の14%だ。

     その背景にあるのが--民主化後も富の分配が進まず、黒人の貧困状態が解消されていないということだ。

     この国は富裕層の上位1%が全体の約7割の富を独占。失業率は26%に上る。この状況の下、農村部から都市部への黒人の移動が続いていた。

     これまで、スクオッターキャンプも都市部のタウンシップの中や周囲に形成された。だが、最近はタウンシップとその周辺からあふれ出た人が、外側の平原の中に新たにキャンプを作る傾向がある。

     ロウリーのキャンプの住民の多くは、ムベレさん同様、ヨハネスブルク周辺のタウンシップから来た。その一人、バニレ・マホボさん(85)は、民主化後の黒人政権が提供を約束した低所得者向け住宅に応募した。だが、いっこうに移り住める気配はない。「もう待ちくたびれた」。供給不足から10年以上待たされるのはざらだ。しかも、優先的に家をもらったのは役人に賄賂を払った者たちだ--こんなうわさもつきまとう。

     「空き地に住んで何が悪い。政府がやるべきことをしないから権利を行使しただけだ」

     ムベレさんは政府への不満を募らせる。こうした不満が「土地の不法占拠」という強硬手段に人々を駆り立てる。

          ◇

     「ついに政治的な解放を実現した。私たちはなおも続く貧困や欠乏、苦難、差別からすべての同胞を解き放つことを誓う」。反アパルトヘイト運動を率いたネルソン・マンデラ元大統領(1918~2013年)は94年の就任式でこう述べ、民主化の初期に人種間の和解促進を成し遂げた。しかし、その後の政権下、貧困や格差などの問題は依然深刻なうえ汚職も広がるなど、マンデラ氏の「遺志」が継がれたとは言い難い。18日のマンデラ氏生誕100年を前に、南アの今を追った。【ヨハネスブルク小泉大士】

    マンデラ元大統領の写真の前でポーズをとるマンドラ・マンデラ氏=ウムタタ空港で2018年7月2日、小泉大士撮影

    理想実現、若い世代が マンデラ元大統領の孫の国会議員

     18日に生誕100年を迎えるマンデラ元大統領の孫で国会議員のマンドラ・マンデラ氏(44)が毎日新聞のインタビューに応じた。貧富の差や汚職がはびこる社会の現実について「手にした自由をどう生かすかが問われている」と述べ、マンデラ氏ら解放運動の闘士から学ぶべきだと訴えた。【ウムタタ(南ア中部)で小泉大士】

     マンドラ氏は、マンデラ氏と最初の妻の間に生まれた次男マカト氏の長男。マンデラ氏が大統領になって以降のほぼ四半世紀で民主化は大きく進展したが、依然として多くの不平等や対立を抱えていると指摘。その一つとして都市部と農村部の格差を挙げ「大都市のケープタウンの水不足には大騒ぎするが、田舎で飲み水に困っても見向きもされない」と語った。

     アパルトヘイト時代から引きずる白人と黒人との貧富の差は期待したほど縮まらず、マンデラ氏の後継者たる与党政治家らの度を越した腐敗が大衆の怒りを買っている。マンデラ氏が生きていたらなんと言っただろう。

     「祖父の代わりに答えることはできないが、祖父は揺るぎない信念を持ち、理想の実現にはどうすべきか考え、合意によって物事を進めようとした」と述べ、そのような姿勢が現在の指導者には欠けていると指摘した。

     そのうえで「祖父の世代の努力によって我々は自由を手に入れた。その自由を維持し、理想を実現するのは私たち若い世代の責任だ」と述べ、そのためには「社会の病理」の克服が必要と訴える。

     「第二のマンデラを作ることはできないが、祖父の信条や価値観を学ぶことはできる。そこから何をくみ取るかは私たち次第だ」

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