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月刊ドライブイン

「戦後日本」の物語伝え終刊

「月刊ドライブイン」を前に、笑顔を見せる橋本さん=東京都で2018年7月9日午後、山内真弓撮影

 高速道路から外れた地域の過疎化、ツーリングブーム、戦後女性の生き方--。自動車の普及と共に各地の道路沿いでにぎわった「ドライブイン」を記録する小冊子「月刊ドライブイン」が先月、vol・12で終刊を迎えた。製作していたのは、全国200ものドライブインを回ったというライター、橋本倫史(ともふみ)さん(35)。橋本さんは、ドライブインで働く人々へのインタビューを通じて「戦後日本」の物語を伝えてきた。

     ドライブインは車で立ち寄り、食事やトイレ、買い物などができる休憩所。モータリゼーションの発展に伴い、各地で増えた。

     1950年代には観光バス客を取り込もうと観光地のそばにできた。60年代には家族やカップル向けにおしゃれな店が、70年代にはバイパス沿いにトラック運転手が食事できる店が目立つようになった。幹線道路沿いに多くあったが、高速道路の新設や、道の駅の急増などの要因が重なり、その数は減少した。

     橋本さんは82年生まれ。幼いころ、家族で車で立ち寄った記憶があるのは、当時急増したファミリーレストランやハンバーガーショップだ。ドライブインの存在を意識せず過ごしてきた。

    「ほとんどお客さんはこないけど、ボケ防止のために続けるつもり」 90歳を過ぎた今も、晃子さんは店に立ち続ける。北海道「ミッキーハウスドライブイン」千葉晃子さん=橋本さん提供

     だが、大人になって、旅先で出合った個人経営のドライブインにひかれた。店主が旅行先で買ったであろう置物が置いてあったり、手書きの看板が飾られていたり--。知り合いの家を訪ねたような不思議な気持ちになった。「ドライブインには、(店主の)生活の中でにじんだり、堆積(たいせき)したりしているものが表われていると思いました」

     ひっそりと営業を続ける店がある一方で、年々、閉店していく店も目立った。早く記録しなければ--。使命感に駆られ、2017年4月に「月刊ドライブイン」を創刊した。毎号約40ページにわたり、各地のドライブインを写真と文章で丁寧に伝えた。今年6月のvol・12で終刊するまで、北海道から沖縄まで計22のドライブインを取り上げた。冊子は現在、一部を東京都内などの書店やネット(hb-books.net)を通じて購入できる。

     <原野を抜けた先に、五軒ものドライブインが--しかも廃墟と化しつつあるドライブインが--密集しているのだ>。vol・1には、かつてドライブインが建ち並んだ地で営業する「ミッキーハウスドライブイン」(北海道浦幌町、1986年開店)を掲載した。「(北海道では)ツーリングブームのころはバイクで若者が多く訪れたそうです。閉鎖された炭鉱で食堂をやっていた人が、開店したケースもあると聞きました」

     vol・5で取り上げたのは、「ロードパーク女の浦」(石川県志賀町)。74歳になる店主の岡本澄子さんを紹介した。店は、松本清張「ゼロの焦点」の舞台となり、人気を集めた観光地「能登金剛」を見下ろす、断崖絶壁に建つ。

    松本清張「ゼロの焦点」の舞台となった能登金剛。これを見下ろす断崖絶壁に建つ「ロードパーク女の浦」は、かつて観光バスで溢れ返っていた=橋本さん提供

     今はお客さんが少なくなったが、全盛期にはスタッフを20人も雇って、店を切り盛りしていたという。こんなくだりもある。

     <「店を始めた頃は出汁の取り方がわからんで、お客さんに怒られてね。(略)」ドライブインを始めるまで、澄子さんは飲食店で働いたことがなかった。(略)「だから、主人が『あそこでドライブインを始めることにした』と言い出した時はパニックでしたよ」>

     夫主導で始めた店で試行錯誤し、必死で切り盛りする--。こんな女性が、各地のドライブインで奮闘していたのだ。橋本さんは「戦後女性の、ひとつのありようだと思います」と語る。

     終刊に伴い、写真展をフォトグラファーズギャラリー(新宿区)で開催している。7月22日まで。ドライブインの様子や、そこで働く人々の姿に、写真と言葉で迫る。12~20時。03・5368・2631。【山内真弓】

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