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社説

高齢化とお金の備え 資産も長寿になる対策を

 高齢社会にまつわる課題で、極めて重要でありながら、さほど注目されてこなかったものがある。個人の資産形成が、長寿に追いつかなくなる問題だ。

     金融庁は今月初めに公表したリポートの中で、「資産寿命が生命寿命に届かないリスク」として警鐘を鳴らした。より長く生きるようになった結果、蓄えを臨終前に取り崩し切る可能性のことである。

     70歳以上の世帯が保有する金融資産の平均額をみると、生命寿命が長くなっているにもかかわらず、金融資産は1994年も20年後も約2060万円で変わらない。ほぼ同期間に約3倍に増え、日本の2・8倍となった米国とは対照的である。

     米国との違いは、保有金融資産の内訳にも表れている。米国の場合、債券、株式、投資信託が合計で金融資産の約半分を占めるのに対し、日本では預貯金が約65%と圧倒的だ。

     高金利時代、勤労世帯は退職金を定期預金に預けておけば、まとまった利子収入が得られた。しかし、そうした利子収入が期待できなくなって久しい。日銀が、金利の付かない政策を長期間、続けているからだ。

     日銀の政策に反転の兆しはなく、個人へのしわ寄せは当分続きそうだ。それでも、個人の資金が預貯金から動かないところに問題がある。

     損失を被った経験や投資の知識不足などから来る証券業界への不信が相変わらず根強い。米国の退職口座のように、老後に備えた長期の資産形成を促す仕組みもまだ不十分だ。

     日本では、長期の分散投資に適した「つみたてNISA」が関心を集めているようだが、2037年までの時限措置で、積み立ても最長20年と、長寿社会を思えば心もとない。

     若い頃から長期の資産形成を行うことがもっと一般的になるよう、政府も金融機関も本腰を入れて取り組む必要がある。投資商品の開発や販売を、より長寿社会に適したものに変えていかねばならない。

     資産運用に関わる業者は、何より投資に対する不信感を本気で取り除く努力が要る。手数料稼ぎのため短期売買を繰り返すなど、顧客本位のサービスを怠ってきた責任は重い。

     将来への経済的不安を取り除くことは、今の消費の喚起になる。有効な経済対策でもあるのだ。

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