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余録

米国西海岸の河口でサギなどに寄生する吸虫は…

 米国西海岸の河口でサギなどに寄生する吸(きゅう)虫(ちゅう)は、まず幼虫の段階で鳥のえさになる小魚の脳にとりつく。寄生された魚は水面で体を震わせたり、翻したり、いかにも鳥に見つかりやすい行動をとるのである▲研究者が小魚の脳の神経伝達物質を調べると、寄生された魚は不安を感じるべき状況に置かれてもストレスを感じなくなっていた。吸虫は小魚の脳を操り、鳥に食べられやすくしていたのだ(K・マコーリフ著「心を操る寄生生物」)▲ネコを宿主とするトキソプラズマ原虫も似たことをやる。これに感染したネズミは天敵であるネコのにおいを恐れないばかりか好むようになるという。世界的には人類も3人に1人が感染者というこの原虫、もしや人の心も操るのか▲米コロラド大などのチームが発表したのは、大学生と社会人を対象とした調査でトキソプラズマ感染者のビジネス志向、起業志向の強さを示す研究報告だった。起業経験も非感染者の倍近かったのは、リスクを恐れぬあらわれなのか▲今までも「交通事故にあいやすくなる」などと報告されたが、因果関係が証明されているわけではない。ただ先の本によれば、腸内細菌はじめ体内のおびただしい数の微生物は人の感情から文化、社会にまで影響を与えているという▲人の「自由意思」がからむだけに欧米の研究者が熱くなるテーマである。が、日本ではもともと虫の居所でころころ変わるのが人間だ。「身中の虫」への新たな知見でも世界をリードしてしかるべきだろう。

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