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余録

今日では血で血を洗う復讐の連鎖のたとえにされる…

 今日では血で血を洗う復(ふく)讐(しゅう)の連鎖のたとえにされる「目には目を」である。古代バビロニアのハムラビ法典が掲げる法理だが、そもそもが目をくりぬくような残虐な身体刑を連想させてイメージがよくない▲だが実はこの条文、刑罰は被害に見合ったものでなければならない--つまり事件を終わらせて復讐を防ぐのが本意だという。多くの部族の共存する王国にあって、悪事で破られた平和と秩序を回復するための「目には目を」であった▲犯した罪科にふさわしい刑罰が下されれば、世界は元のバランスを取り戻すというのが因果応報(いんがおうほう)の物語だろう。そんな自然な応報感情からすれば、いくつ命があっても償いきれない無差別大量殺人がなされたオウム真理教事件だった▲新たに死刑囚6人の刑が執行され、これで死刑囚13人を含め一連の事件で有罪となった190人全員の刑が執行された。法の裁きが終わったとしても、被害者の生命はもちろん、事件で破壊された世界がこれで回復したわけではない▲荒唐無稽(こうとうむけい)な教義が若者を拘束し、大量破壊兵器を自作・使用するという事件は、犯罪である以上に社会の深刻な病理を示していよう。この社会の内から生まれた不気味な暴力は先進国社会の無差別テロの時代を先取りする形となった▲法による応報の物語は終わろうと、「目には目を」では元に戻せない現代文明の病根である。憎悪や暴力の誘惑、若者の心の渇き、権威への盲従など、「終わりなきオウム」と向き合わねばならない21世紀だ。

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