メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

貿易激震

米EU、関税撤廃交渉へ 緊張一旦緩和 両首脳が合意

 【ワシントン清水憲司、ロンドン三沢耕平】トランプ米大統領と欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は25日、関税など貿易障壁の撤廃を目指す通商交渉を開始し、米国が検討中の自動車・同部品の輸入制限の発動を控えることで合意した。ただ、米国との通商交渉を巡ってはEU加盟国から反発が出る恐れもあり、交渉が順調に進展する保証はない。

    車の輸入制限、棚上げ

     「ご覧の通り、EUと米国はお互いが大好きだ!」。トランプ氏は首脳会談後、ツイッターにこう投稿し、ユンケル氏と自身が抱擁している写真を掲載。EUを貿易上の「敵」と発言してきた態度から一転、友好ムードを強調した。ユンケル氏も会談後に行った演説で「この日の合意には満足だ」と強調。「貿易戦争」の回避を訴えてきたドイツのアルトマイヤー経済相は「多くの労働者が救われる」と喜びをあらわにし、マルムストローム欧州委員(通商担当)も「(米欧が)新たなページをめくった」と評価した。

     両首脳は、機能不全が指摘される世界貿易機関(WTO)の改革を目指すことや、中国による鉄鋼・アルミニウムの過剰生産と知的財産権侵害の問題にも連携して対処することで合意した。貿易戦争の背景にある問題の解決を図る狙いで、米議会下院で通商問題を所管するブレイディ歳入委員長(共和党)は「素晴らしいニュースだ」と評価した。

     ただ、フランスを中心にEU内で期待が大きかった、米国による鉄鋼・アルミ追加関税の撤回は今回の合意に盛り込まれていない。また、EUは中国の報復関税で打撃を受ける米国産大豆や、トランプ氏が求めていた液化天然ガス(LNG)の輸入拡大を容認。まずはトランプ氏に譲歩することで自動車の輸入制限発動を棚上げし、「貿易戦争」回避を優先させた格好だ。

     今後の米欧の通商交渉では高官級の作業部会を設置し、自動車を除く工業製品について「関税ゼロ・非関税障壁ゼロ・補助金ゼロ」の具体策を検討する。化学品や医薬品なども検討対象で、実現すれば包括的な自由貿易協定(FTA)に発展する可能性がある。

     米国とEUはオバマ政権時代の2013年、双方の貿易障壁や規制を包括的に見直す環大西洋貿易投資協定(TTIP)交渉を開始。域内人口8億人を上回る世界最大のFTAとして期待され、16年秋までに計15回の交渉を重ねたが、多国間の貿易枠組みに否定的なトランプ政権の誕生によって交渉は停止状態に陥っていた。今回の通商協議を「簡易版TTIP」と期待する声もあるが、TTIP交渉では米製品の流入に反対するデモが欧州各地で発生しており、今後の通商交渉を巡っても反対論が浮上する可能性がある。

     EUには交渉の引き延ばしで時間を稼ぐ狙いもあるとみられる。しかし、この日の合意で、トランプ氏は鉄鋼・アルミ追加関税の継続や自動車・同部品の輸入制限発動という「カード」を温存したとも言える。中国との間でも、制裁発動を見合わせる「休戦」でいったん合意しながら、結局は実施に踏み切った。

     米欧は工業製品の「関税ゼロ」を目指すものの、自動車分野は例外とする方針。「ディールメーカー(交渉人)」を自負するトランプ氏は自国勢が強い大型車分野で輸入車に適用している関税25%を維持する構え。米国は自国の利益を最優先しながら欧州側に大幅譲歩を迫るとみられ、再び亀裂が深まることも予想される。

    「日本も譲歩を」警戒

     「話し合いの機運が出てきたのは良かった」。日本政府関係者は米欧が貿易摩擦の緩和に向けて歩み寄ったことに胸をなで下ろす。協議決裂でトランプ氏が一段と保護主義政策をエスカレートさせる恐れがあったためだ。しかし、日本も米国との2国間交渉に持ち込まれ、大幅な譲歩を迫られる恐れがあり、米国への警戒感は依然として根強い。

     トランプ政権はEUだけでなく、日本も対象に自動車・同部品の輸入制限発動をちらつかせてきた。日本車の輸出台数の4割近くを米国向けが占め、年間の輸出額は4・6兆円に上る。米国が日本車に追加関税を課せば「日本企業のコスト増は2兆円規模」との試算もあり、日本政府は輸出制限の回避を模索してきた。

     日本とEUは7月17日、経済連携協定(EPA)に署名。自由貿易体制を推進するとともに、トランプ政権の保護主義政策に懸念を表明する共同声明もまとめた。日本と歩調を合わせたEUは今回の米欧首脳会談で通商交渉に合意しただけでなく、大豆の輸入増など米国側の要求を受け入れた。

     日米両政府は8月中にもFFRと呼ばれる新たな閣僚級の貿易協議を開く方向で調整している。日本は自ら主導した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)という多国間の自由貿易の枠組みに米国を引き戻したい考え。しかし、米国は日本とも2国間の通商交渉で有利な条件を引き出す思惑があるとみられる。

     米欧の交渉入りで日本は欧州と連携して米国をけん制しにくくなった側面があるほか、米国農産品の輸入拡大には与党内の反発が予想され、譲歩しにくいのが現状だ。政府高官は「果たしてトランプ氏が満足できる形でディールができるか」と不安を漏らした。【安藤大介】

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 日産会長逮捕 ゴーン神話「数字の見栄え良くしただけ」
    2. ゴーン会長逮捕 日産社長「私的流用、断じて容認できない」 会見詳報(1)
    3. 高校野球 誤審で甲子園行き明暗…終了一転逆転 岡山大会
    4. 全国高校サッカー 県大会 西京、5年ぶり全国切符 高川学園の猛攻しのぐ /山口
    5. 日産 ゴーン会長を解任へ 「会社資金を私的に流用」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです