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余録

「降り物は、いよいよ止まず、唐傘をさして歩いた…

 「降り物は、いよいよ止(や)まず、唐傘(からかさ)をさして歩いた。屋根・道・地にも、あくを敷いたように溜(た)まり、足跡がついた」。これは1707(宝永4)年12月の富士山宝永噴火の際に、江戸に降った火山灰の記録だ▲秋田藩江戸屋敷で年少の藩主の守り役だった人の日記で、最近見つかった噴火の史料という。初日は空気の振動や雷光が続き、昼から夕方のように暗くなって明かりをつけた。幕府の情報で富士山の噴火と知ったのは、5日後だった▲噴火の振動は4日の間、降灰は12日間も続いた。その後も「風が砂を家の屋根より吹き落とし、世間は、ほこりが目に入って、ことごとく難儀(なんぎ)」。筆者自身も目を傷めたとか(磯田道史(いそだ・みちふみ)著「天災から日本史を読みなおす」中公新書)▲この時は江戸の中心部で数センチの灰が積もったとみられている。だが、気象研究所が同規模の富士山噴火を最近の1100近い実際の気象パターンにあてはめた推計では、うち約3%のパターンで東京・大手町の降灰量が10センチを超えた▲同じ推計により作製した最大降灰量の分布図では、神奈川県のほぼ全域と静岡、山梨、東京の3都県の一部で30センチ~1メートルに達する可能性がある。ちなみに5ミリで鉄道が止まり、1センチで停電が発生、2センチで健康被害が生じる降灰である▲「天地返し」とは宝永噴火の降灰で埋まった土地を掘り返して耕作地として復活させた作業という。大規模噴火災害を記録し、闘ったご先祖らの経験にも新たな光をあて、備えを固めた方がよさそうである。

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