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大岡信と戦後日本

/5 恋愛という転機 「魂の向日性」持つ女性と

 「確かにこの詩を見せられた記憶があります。信(まこと)さんの家へ行った時に、ノートを見せてくれました」

 大岡信の妻かね子さん(87)は7月中旬、静岡県裾野市の自宅のテーブルに、古びた大学ノートを置いた。話に出た一編は未発表の作品で、当時19歳だった2人の、ある重要な場面を語るものでもあった。

 <さうだ、私はここにゐる、すつかり行手に絶望して、この硝子(ガラス)張りのひとやのなかに。硝子のむかふにあなたがゐる。あなたの顔がしきりにうごく。私になにか問ひかけながら。

 いけない、いけない、こちらを向いては。黒々とした瞳の奥に、おそろしく深い湖がある。ゆらめく波が私の…

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