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台湾の村

「ニホンゴ」今も(その1) 統治の名残、母語と融合

先住民タイヤル族伝統の踊りを披露する寒渓村の女性たち=台湾北東部・宜蘭県寒渓村で2018年5月、福岡静哉撮影
寒渓村

アンタ、タベタモ? タベタモー ヤバ、イロオトコヨ

 台湾北東部の山間部にある宜蘭(ぎらん)県寒渓(かんけい)村。先住民タイヤル族が暮らす小さな集落を訪ねると、公民館で祭りが開かれ、民族衣装を身にまとった女性たちが伝統の踊りを披露していた。

 「アンタ、タベタモ?」(あなたはごはんを食べ終わった?)

 「タベタモー」(食べ終わった)

 中国語に混ざって日本語のようなあいさつが飛び交った。

 「アンタ、ニホンジン? タベタモ?」

 食事を勧めてくれた方喜恩(ほうきおん)さん(36)に「この村の人は日本語が話せるのですか?」と日本語で聞いた。ところが方さんは私の言葉をうまく聞き取れないようだ。次は中国語で同じ質問をすると「コシラケ」(少しだけ)と答え、中国語で説明してくれた。

 「これは私たちの母語で、日本語とタイヤル語が混ざったような言葉です。日本語とも違う言葉です。私も日本語は少しの単語は分かりますが、あまり聞き取れません」

 村でこの言葉は「ニホンゴ」「カンケノハナシ」(寒渓語の意味)などと呼ばれているという。

 台湾では80代以上の世代は日本語を話せる人が多い。日清戦争に勝って1895年に台湾を領有した当時の日本政府が、終戦直前まで日本語教育を徹底したためだ。だがそれより下の世代は、日本語を勉強した人などでない限り、話せない。村人の会話に耳をそばだててみる。

 「アンタノ、ナニウエトル?」(あなた、畑に何を植えているの?)。鄭澄美(ていちょうび)さん(81)がこう尋ねると、張良相(ちょうりょうそう)さん(48)は「ワシ、エトゥン、ウエタモ、ユンアイ、タベタモ」(私はトウモロコシを植えた。でも猿に食べられてしまった)と答えていた。

 「エトゥン」「ユンアイ」はそれぞれ「トウモロコシ」「猿」を指すタイヤル語。その他の日本語らしき箇所も、文法やアクセントが異なり、日本人には聞き取れない。方さんがこう解説する。「台湾では学校教育が中国語だから、若者の言葉は中国語が主流。でもこの地域の中高年は『ニホンゴ』の割合が多い」

 学生時代、台北の街中でニホンゴで話していたら、近くの日本人から不思議そうな目で見られたそうだ。

 ただ20代でニホンゴを話す人もいる。村を歩いていると、呉以諾(ごいだく)さん(25)が自宅前であやしていた男の赤ちゃんに話しかけていた。

 「ヤバ、イロオトコヨ、アンタ」

 「ヤバ」はタイヤル語で「とても」。「イロオトコ」は「色男」で、外見が格好いい男性のこと。「とってもイケメンだね、あなたは」という意味だ。

 日本の台湾統治は73年前、日本の敗戦とともに終わり、日本語教育も終止符を打った。なのに、なぜ--。現地を取材した。【宜蘭県(台湾北東部)で福岡静哉】


 ■ことば

台湾の先住民族

 17世紀ごろに漢民族が中国から台湾に移住を始める前からいた人々。台湾では「原住民」と呼ばれる。パイワン族、タイヤル族など16民族が認定されている。蔡英文総統はパイワン族、女優のビビアン・スーさんはタイヤル族の血を引く。

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