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余録

江戸川柳に「定斎屋は色の黒いが自慢なり」がある…

 江戸川柳に「定(じょう)斎屋(さいや)は色の黒いが自慢なり」がある。定斎屋は暑気(しょき)あたりの薬を売って回る物売りだが、他の商売のような売り声がない。歩くごとに鳴る薬箱の金具の音と、顔の日焼けが看板代わりだった▲というのも暑気あたりの薬の効能を示すために炎天下、かさや手ぬぐいをかぶらずに街を歩き回ったのだ。だが明治に入るとさすがに、こんな販売方法を批判する声が出てくる。販売元もすぐに売り子にかさをかぶらせるようにした▲「何にしても定斎屋が二百年、笠(かさ)をかぶらず暑中行くのを改めたのも開けた世のありがたさでありましょう」とは当時の新聞の論評だった。この文明開化のおかげで命拾いした売り子もいただろう(興津要(おきつ・かなめ)著「大江戸商売ばなし」)▲こちらは今夏の「一つの災害」といわれる酷暑である。暑気あたり--いや、熱中症の搬送者数は今季すでに昨シーズン全体を上回り、過去最多となるのは確実という。今までの夏の常識を改めねば人の生命にかかわることになった▲イベントやお祭りでは子どもの行事の取りやめが相次いだ。学校ではプール開放が中止され、部活は熱中症対策が最優先である。高校野球も水分摂取タイムが設けられ、炎天下のスポ根物語は定斎屋の日焼けと同じ運命をたどるのか▲札幌市では電気を止められた生活保護受給者の女性が熱中症で亡くなった。エアコン設置費用が今年から条件付きで支給される生活保護世帯だが、こんなケースもある。温暖化時代の「文明開化」いまだしだ。

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