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憲法を知りたい

1989年「法廷メモ訴訟」最高裁判決 「開かれた裁判」の一歩

最高裁判決後、作家の佐木隆三さんと握手して喜ぶローレンス・レペタさん(右)

 <くらしナビ おとなへステップ>

     全国の裁判所では日々さまざまな裁判が開かれており、公開の法廷では誰(だれ)でも傍(ぼう)聴(ちょう)することができます。法廷での録音録画は禁止されていますが、メモは可能です。私(わたし)のような裁判を担当する記者は連日、裁判の内容を一言一句書き落とすまいと、ペンを握(にぎ)りしめています。

     しかし、わずか30年前まで法廷でのメモは禁じられていました。これを可能にしたのが、米国人弁護士のローレンス・レペタさんが起こした「法廷メモ訴訟」です。

     レペタさんは1982年に日本で、ある刑(けい)事(じ)裁判の傍聴を始めましたが、法廷でメモを取り始めると、廷(てい)吏(り)から制止されました。次の傍聴から、事前に裁判長にメモの許可を申(しん)請(せい)し続けましたが、認められませんでした。

     レペタさんは法廷でのメモを禁じることは、憲法21条が保障する「表現の自由」などに違(い)反(はん)するとして提(てい)訴(そ)しました。1審(しん)・東京地裁判決(87年)は請(せい)求(きゅう)を認めず、2審・東京高裁判決(同)も認めませんでした。高裁は「訴訟の公(こう)正(せい)、円(えん)滑(かつ)な運営に少しでも影(えい)響(きょう)の出るおそれがある限り、メモの制限はやむをえない」などと突(つ)き放(はな)しました。

     これに対し、89年の最高裁は「法廷内メモは、表現の自由の趣(しゅ)旨(し)から尊重に値し、故(ゆえ)なく妨(さまた)げられてはならない」とし、裁判所が運用で禁じてきたメモ行(こう)為(い)を原則自由とする判決を出しました。

     そもそもメモ行為の禁止は「法廷における威(い)厳(げん)の保持と秩(ちつ)序(じょ)維(い)持(じ)」などが理由とされていました。しかし、最高裁は「傍聴人のメモが公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げることは通常あり得ず、特段の事情がない限り、傍聴人の自由に任せるべきだ」としました。

     この判決は「開かれた裁判」を実現するための大きな一歩となりました。ただし、現代はパソコンや携(けい)帯(たい)のメモ機能を備忘録として使う人も増えており、検察官や弁護士は既(すで)に廷(てい)内(ない)へのパソコンの持(も)ち込(こ)みが認められています。これが傍聴人にも広がるかどうかは、次の時代の宿題かもしれません。【石山絵歩】=次回は9月6日に掲載

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