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京都観察いま・むかし

八木先生の覚え書き/49 京都と東アジア情勢 経ケ岬米軍基地に注目を /京都

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と大韓民国(韓国)との首脳会談(4月27日)と、それに続くアメリカと北朝鮮の首脳会談(6月12日)は、なお多くの課題を残しつつも、全体としてはまさに歴史的で画期的な成果を生みだしたと筆者は評価します。実を言えば、こうした国際環境の大転換(少なくともその兆しの出現)は、後で触れるように、京都にとっても非常に大きな意味をもつことになると思います。

     南北首脳会談では、朝鮮半島にもはや戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを南北同胞と全世界に宣言し、一切の敵対行為を中止し、今年中に朝鮮戦争の休戦協定を終戦協定、そして平和条約に転換することを約束しましたし、米朝首脳会談では南北の板門店宣言を前提にし、北朝鮮は完全非核化を、アメリカは北朝鮮の体制の安全保障を、それぞれ確約しました。むろん、終戦協定の締結や非核化の過程には未確定要素が多いとか、拉致問題が含まれていないなどの批判もありますが、昨年までの南北および米朝の一触即発の危機状況を思えば、この和平ムードはおおいに歓迎すべき事態だと言えます。少なくとも関係国が戦火を交えるなどという最悪の局面をひとまず回避できたことに異議を唱える人は、さほど多くはないものと筆者は見ています。

     米朝首脳会談の意義について、沖縄の地元紙『琉球新報』社説(6月13日付)は次のように論じました。「朝鮮半島に平和が訪れれば脅威の前提が崩れる。普天間飛行場を維持し続けることや名護市辺野古への新基地建設は大義名分を失い、必要なくなる」と。沖縄を含めてこの国に存在する在日米軍基地は、主として北朝鮮と中国とを“脅威”と認識して設置されており、その在日米軍にこの国が全面的に協力することになっています(日米安保条約およびそれに基づく日米地位協定による)。だが、脅威が脅威でなくなれば、『琉球新報』が主張するように、在日米軍基地維持のエクスキューズがおおむね消滅することは見やすい論理的帰結です。

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     ここで筆者が、南北および米朝の首脳会談の成果を東アジアの安定化に寄与するものと高く評価し、その視点から沖縄の地元紙の社説を引用した理由は、もうお分かりだと思います。以前の本欄に記述したことですが、京丹後市・経ケ岬には関西唯一の在日米軍基地(Xバンドレーダー基地)があり、この基地による騒音、電磁波、環境破壊、交通事故等々の住民被害は沖縄におけるそれと酷似しています(2017年3月29日付「経ケ岬の米軍レーダー基地 住民の心身・文化踏みにじる」)。このレーダー基地への影響を考えるのです。

     経ケ岬のXバンドレーダー基地は明らかに北朝鮮敵視の日米ミサイル防衛網の一環として設置されたものですから、南北間および米朝間の緊張緩和と和平ムードが進む情勢においては、『琉球新報』社説の表現を借りれば、「(Xバンドレーダー基地も)大義名分を失い、必要なくなる」はずなのです。現にトランプ大統領は、在韓国米軍の縮小・撤退にまで言及しました、ただし、そのホンキ度のほどは明確ではありませんが。在韓米軍の縮小・撤退が可能なのであれば、在日米軍のそれが絶対不可能というものでもありますまい。

     しかし、南北および米朝の首脳会談による状況変化を地元京都の問題(Xバンドレーダー基地問題)にひきつけて報道したメディアは、管見の限りでは、地元紙『京都新聞』や全国紙の京都版を含めて皆無でした。在日米軍基地の7割以上が集中する沖縄と、レーダー基地一つのみの京都とでは、問題の深刻さが違うとでもいうのでしょうか。しかし、米軍基地の規模には差異があるにしても、一人一人の住民が受ける基地被害は沖縄においても京都においても共通しているのです。また、基地被害のみならず、基地の存在それ自体が戦時には攻撃を呼び込む危険性をもつ点でも問題があります。元新聞記者の筆者としては、こうした点の報道の不在が実に意外で残念なことだったと言わねばなりません。

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     南北・米朝会談の成果はまだ具現化していませんが、だからといって、動き出した和平に向けての歴史の歯車をもう二度と逆回転させてはなりません。沖縄はもちろん、全国の、そして京都の在日米軍基地をも縮小・撤去させる千載一遇の好機が今やってきつつあるのではないかと筆者は期待するのです。

     東アジア情勢の激変に完全に乗り遅れている、否、乗り損ねているのがこの国の政治です。テロだミサイルだのと騒ぎたて、Jアラート(全国瞬時警報システム)を鳴らして住民避難訓練を繰り返してきたこの国の政治は、住民避難訓練だけは“当面中止”したものの、基本的には今も北朝鮮敵視政策を修正していません。こうした政治のあり方が、朝鮮学校への高校無償化適用排除や自治体の補助金廃止といった差別的な政策と関連しながら、たとえば、京都朝鮮第一初級学校(現・京都朝鮮初級学校=京都市伏見区)で行なわれたヘイト・スピーチ、ヘイト・クライムの下地になっていることもよく指摘されるところです。闇雲な北朝鮮敵視をやめ、東アジアでの平和共存をもとめるならば、沖縄の、全国の、そして京都の米軍基地は平穏に返還されるはずだと、やや楽天的に筆者は展望しています。(八木晃介花園大学名誉教授・元毎日新聞記者=社会学)=次回は8月25日

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