「社長、大変です。他社で保険金の支払い漏れがあり、マスコミが動き出しています」。2005年7月、あいおい損害保険(現あいおいニッセイ同和損保)社長だった児玉正之(70)は、東京都内の中華料理店で部下から耳打ちされた。さっそくあいおいでも調べると、事故の相手を見舞う際の菓子折り代を補償する自動車保険の特約で、「契約者から請求がない」との理由で保険金を払っていない事案が見つかった。のちに社会問題化して損保業界を揺るがす「不払い問題」の始まりだった。
背景には、1998年の自由化に伴う競争激化があった。横並びだった保険商品が自由化され、各社は競い合…
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