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余録

作家の田山花袋のため息が聞こえてきそうだ…

 作家の田山花袋のため息が聞こえてきそうだ。「日本橋附近(ふきん)は変ってしまったものだ。もはやあのあたりには昔のさまは見出(みいだ)せない」。首都高速が頭上を通る今の日本橋(東京都中央区)ではない。1927(昭和2)年、新聞に寄せた随筆の書き出しだ▲それももっとも。その4年前、多くの犠牲者を出した関東大震災で街の様相は一変した。橋の北詰め東側にあった魚河岸も壊滅した。「江戸時代はおろか明治時代の面影をもそこにはっきりと思い浮べることは困難だ」▲時代は下って、64年の東京五輪が、また橋の風景を変えた。突貫工事で造られた首都高で日の当たらなくなった橋に、落語家の六代目三遊亭円生が随筆で嘆いた。「今は無惨(むざん)なもんですな」。その風景がまた変わるのか▲これまで浮かんでは消え、消えては浮かんだ首都高の地下化が動き出した。先月、国や都などが総事業費を約3200億円とする枠組みに合意した。景観を取り戻そうと要望してきた地元の喜びはひとしおだろう▲そもそも最初に木造の日本橋が架けられたのは1603(慶長8)年。五街道の起点で、名所として浮世絵にも描かれた。江戸期には焼失などで何度も架け替えられた記録が残る▲現在の石造りのアーチ橋は1911(明治44)年に完成。震災も空襲も生き延びた歴史の証言者だ。一方で、周囲は再開発が進み、現代的なビルが建ち並ぶ。「昔のさま」を取り戻した橋がどう目に映るのか。もう誰も嘆きをもらすことがなければよいのだが。

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