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堀江敏幸・評 『安岡章太郎 戦争小説集成』=安岡章太郎・著

 (中公文庫・1080円)

虚無的で諦観に満ちたまなざし

 安岡章太郎が学徒出陣で中ソ国境に近い孫呉に送られたのは一九四四年のことだが、胸部疾患で病院行きとなり、終戦を待たずに内地での治療を命じられたため、南方に回されて全滅した所属中隊とおなじ運命をたどらずに済んだ。

 本書はその従軍体験と敗戦直後の日々を描く小説を編んだ、アンソロジーである。内訳は、長篇と呼んで差し支えない「遁走(とんそう)」(一九五七)と、この作品とゆるやかな関係性を保っている短篇五作、開高健による「遁走」論と、安岡・開高による「戦争文学と暴力をめぐって」と題された対談で構成されている。

 なるほど「戦争小説集成」と銘打つにふさわしい。しかし、戦闘場面は描かれていない。主人公はみな、他の…

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