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目は語る

8月 藤田嗣治の「素晴らしい乳白色の地」 精神、官能性、融合した裸婦像=高階秀爾

 私は二十五まで東京で暮らした。それから二十年パリで暮らした。私の体は日本で成長し、私の絵はフランスで成長した。

(『随筆集 地を泳ぐ』)

 彼自身後にこう述べているように、藤田嗣治(1886~1968年)が画家を志してパリに渡ったのは1913年、26歳の時であった。ところが翌年、第一次世界大戦が勃発、絵画修業どころではなくなった。多くの日本人画家が帰国するなかで、藤田はあくまでもフランスにとどまることを決意し、苦労を重ねながら制作に励んだ。その苦労が報いられるのは大戦終結後、再開されたサロン・ドートンヌに初めて出品した作品が全点入選するという快挙を成し遂げてからである。以後毎年入選を繰り返し、特に誰もまねすることのできない「素晴らしい乳白色の地」の優艶な裸婦像は、美術家仲間や愛好者から高い評価を受け、藤田は一躍画壇の寵児(ちょうじ)となった。ある批評家はその繊細精妙なデッサンと、精神性と官能性をひとつに融合した裸婦像を、日本の、さらには東洋の高い気韻の伝統につながるものとして、藤田を「モンパルナスのウタマロ(歌麿)」と呼んだ。

 パリでの修業と栄光の時代を藤田の画歴の第1期とすれば、その後の20年ほどが第2期にあたる。30年代…

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