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「ランドセルが買えない!」家庭の実態

 小学生のランドセルが嫌に大きくなったような気がする。40年ぐらい前、せがれがランドセルを背負っていた時と比べると教科書の数が増えたのだろうか?

    当然、重い。牛革で1400グラムほど。教科書がかさばるから、小柄な子供には気の毒だ。(ランドセルの他にバッグを持っている子供も多い)

    それより気になるのは「ランドセルのお値段」である。最低でも2万円弱。6万円、7万円はザラである。おじいちゃん、おばあちゃんが孫のプレゼットするケースが多いから「少々高くても立派な牛革が欲しい」という向きも多い。でも、そんなサポートがない「貧乏家庭」にとって、ランドセル代は大きな負担ではあるまいか?

     そんなことを心配していたのだが、最近になって、現実に「ランドセルが買えない家庭」が存在することを知った。

     沖縄県が「子どもを取り巻く生活実態」を把握するために県内の1歳児と5歳児の保護者を対象に初めて「未就学児調査」を実施した。その分析結果を読むと、手取り収入を世帯人数で調整した「等価可処分所得」が年122万円(貧困線)に満たない「困窮世帯」の割合は23.3%。貧乏人が多い。

     「小学校入学に向けたランドセルや学用品の費用が不足しそうか」という問いに「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と答えた5歳児の親は、全体の約20%もいた。僕がなんとなく抱いてした「ランドセルの心配」が現実になってしまった。

    こうした「困窮世帯」では仕事の忙しさ、家計の苦しさを理由に、子どもが病院や歯医者に受診できない。我慢しているのだ。

     沖縄県だけの話ではない。日本列島すべからく、「金持ち」と「貧乏人」の格差が広がっている。金持ちは更に「金満家化」し、貧乏人は子どもの教育費にビクビクしている。

     例えば、上場企業の役員報酬額である。

    東京商工リサーチがまとめた2018年3月期の「役員報酬1億円以上開示企業」調査によると、1億円以上の役員報酬を受け取った役員は240社、538人(6月29日現在)。前年より17社、72人増え、過去最高を更新した。金満家は増えている。

     びっくりするのは、その金額である。報酬額1位は、3月末まで社長を務めていたソニーの平井一夫会長で、な、なんと27億1300万円。こんなに貰って、どうするのか?

     経済雑誌などは「日本はまだ低い」というけれど、この莫大な報酬に相応しい「仕事ぶり」だったのか? 甚だ疑問である。

    クビをかしげたくなるケースもある。例のシェアハウス投資関連の不正融資で大揺れのスルガ銀行では、岡野喜之助元副社長(故人)に5億6500万円など、3人が1億円以上だ。

     過酷な長時間労働や残業時間の「過少申告」で労働基準局から是正勧告を受けている大東建託は6人の役員が1億円超えている。

     不正融資や社員にタダ働きをさせて儲けた利益を「おエライさん」が搾取?している。

     報酬トップの役員と、その会社の従業員の平均年収を比べると、役員は従業員の年収の30~40倍の報酬を平気でもらっていることになる。「格差」は同じ企業の中でも、生まれている。

    サラリーマンの給料は上がっているのか? はっきり言って、伸び悩んでいる。

    内閣府の調査では正社員の15~17年の平均給与を年齢層別に5年前(10~12年)と比べると、全体で月額31万円から31.9万円と微増である。しかし、40~44歳に至っては、なんと5年前の34.7万円から34.1万円に減っている。

    サラリーマンの儲けは低位安定? 企業トップと従業員の「格差」はドンドン大きくなっている。

     「官と民の格差」もある。例えば、ボーナスである。 日本経済の95%を支える中小、零細企業のボーナスは「スズメの涙」。どのくらいもらっているか?調査結果がないぐらいだから、分からない。

    お役人はどうだろう? 18年の国家公務員夏のボーナス支給額は65万2600円(平均年齢35.9歳)。管理職の場合は80万3500円(平均年齢43.6歳)である。

    零細企業で「ボーナスゼロ」というところもあるから、役人は恵まれている方ではあるまいか? (はっきり言って、僕は公務員はもっともらうべきだ、と思っている。よく働いてくれる。しかし「官と民の格差」が増大しているのも、悲しい現実なのだ)

    この「格差」が何を起こすか?「ランドセルが買えない」現実が何を起こすか?

    「貧困の連鎖」である。

    例えば「奨学金破産」。日本学生支援機構は04年度に日本育英会から改組した独立行政法人で、大学などへの進学時に奨学金を貸与している。担保や審査はなく、卒業から20年以内に分割で返す。借りる人は連帯保証人(父母のどちらか)と保証人(4親等以内)を立てる「人的保証」か、保証機関に保証料を払う「機関保証」を選ぶ(機関保証の場合、保証料が奨学金から差し引かれるシステム)。

     今、2人に1人の大学生が、この奨学金を頼りにしている(16年度末現在の数字だが、410万人が奨学金を借り、卒業後、返済している)。

    しかし、マトモな職業に就けなければ、返せない。奨学金にからむ自己破産が増えるのは当たり前だ。16年度までの5年間で延べ1万5338人が自己破産している。内訳は本人が8108人(うち保証機関分が475人)で、連帯保証人と保証人が計7230人だった。

    本人だけでなく、親が、兄弟が自己破産している。

    この中には、親が失業して収入がない。そこで、奨学金をもらって一家を支え、学費はアルバイトで払う、というケースもある。

    「ランドセルが買えない家庭」が、何年かたち、教育資金がらみで自己破産する! そんな気がしてならないのだ。

    戦後、日本は(日本だけでなく世界は)民主主義、法治主義、人権主義が普遍的な価値観だった。

    教育を受ける権利はその象徴だった。それが、崩れているような気がする。力のある人間が富を独占する。そして「教育を受けられない貧困」は連鎖する。そんな時代を予感させるのが「ランドセルが買えない!」の叫びである。

     自民党総裁選の9月が近づいている。ぜひとも「民主主義と教育」を議論してもらいたい。(毎日新聞客員編集委員)

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