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余録

沖縄に伝わる古い琉歌だという…

 沖縄に伝わる古い琉(りゅう)歌(か)だという。「言ちも役立たぬ 事どまたやすが 言やねばやすまらぬ 肝(ちみ)のくりしや」--言っても叫んでもどうにもならないことだが、やはり叫ばなければ心のつかえはおさまらない▲薩摩の力ずくの横暴にあらがう心の内を、思い通りにならぬ男女の恋に託した歌だという。力の前での言葉の無力を知らされてはいても、言わねばおさまらぬわだかまりがある。翁長雄志(おなが・たけし)さんの胸をもよぎったろう沖縄の意地である▲国土の1%に満たぬ沖縄に在日米軍基地の7割が集中する中、なぜ新たな基地なのか。沖縄保守政界の重鎮だった翁長さんが、普天間飛行場の辺野古移転阻止を掲げて県知事となったのも本土住民にそう問わざるをえなかったからだ▲「イデオロギーよりアイデンティティー」と訴え、「オール沖縄」の立場から政府の辺野古移転を拒んだ翁長さんだった。今まで県民が米軍に「自ら差し出した土地はない」と、「ウチナンチュウ(沖縄人)」の誇りを称揚してみせた▲移転を「粛々と進める」との政府の物言いに反発した一幕も思い出す。問答無用の「上から目線」だと官房長官を難詰したのも、住民の意地など眼中にない力ずくの「粛々」に「言やねばやすまらぬ 肝のくりしや」だったのだろう▲最後の公の発言の場となった辺野古埋め立て承認撤回の記者会見では、この先何十年も基地と地域振興策の取引が続いていいのかと問うた。生命を燃やし尽くした意地の問いが沖縄と本土の住民に残された。

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