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ここであった戦争

天王寺かいわい 大阪空襲で大きな被害 軍使用の防空壕も /大阪

生玉公園に残る地下壕の通気塔(左手前)=大阪市天王寺区で、亀田早苗撮影

 天王寺かいわいで大阪空襲の跡をたどった。案内してくれたのは「大阪戦争モノ語り 街かどの『戦跡』をたずねて」の著者、森田敏彦さん(75)。「天王寺区は大阪市内でも被害が大きかった」という。生玉公園には陸軍が使った頑丈な地下壕(ごう)も残る。【亀田早苗】

     大阪大空襲は1945年3月13日から8月14日の間の計8回とされる。3月13日深夜から14日未明にかけた第1次空襲では、都心に近い住宅密集地が狙われた。中心市街地は焼き払われ、約4000人が亡くなった。

    生玉公園(大阪市天王寺区)

     このとき、米軍の照準点の一つが天王寺区の隣、浪速区塩草だった。また、6月15日の第4次空襲では天王寺駅付近が狙われた。森田さんが「大阪市戦災復興誌」から数字を示す。天王寺区の空襲前の人口は10万1901人。それが戦災と疎開で8万3447人減った。「え? 減った、ですか」。聞き直した。「残った」ではないのだ。

    最初の大阪大空襲で焦土と化した松屋町筋=大阪市天王寺区の生国魂神社前から北方を望む、1945(昭和20)年3月撮影

     地下鉄谷町九丁目駅からスタート。落ち着いた寺町だが、空襲時は大火に包まれ、住宅や寺社の多くが燃えた。由緒ある生国魂神社もほぼ全焼した。

     神社の南側には生玉公園がある。煙突みたいなものが地面から突き出ている。「地下壕(ごう)の通気塔です」と森田さん。公園内の階段を下りると、壕の正面に出る。

    公開された地下壕=大阪市天王寺区の生玉公園内で1991年8月27日

     説明板があった。1940年に公園を着工、軍部が戦局を拡大させる中、空襲に備えて大阪市が地下壕を建設、戦争末期には陸軍が使用したとある。内部はアーチ状でコンクリート造り2階建て、幅9メートル、高さ6・5メートル、長さ約24メートル、1階の床面積203平方メートル。

     説明には、建設にあたり「強制連行などで集められた朝鮮人が過酷な労働をさせられた」という証言があったことも書かれている。

     内部で働かされたという体験者の証言を得た「大阪府朝鮮人強制連行真相調査団」が91年、大阪市に立ち入り調査などを求めた。市建設局は内部を調査し、公開もした。ただの防空壕ではない性格が明らかになった。

     説明文などによると、戦後の「米国戦略爆撃調査団」による大阪の防空対策の報告書で、この壕は「特別防空壕」とされた。特別防空壕は軍の関係などで当時、一般には入手できない資材で造られた。

     壕建設は当時の新聞でも宣伝され、学校の生徒らも勤労奉仕に動員された。「防空意識を高める」狙いだった。だが記録などから「市民が避難することは許されない軍事施設だったと考えられる」と森田さんはいう。「空襲で周りの人が逃げ惑っていたとき、中の人はどう思ってたんやろうね」とつぶやいた。

     森田さんらが世話人を務める市民団体は、2005年、大阪市に貴重な戦争遺跡である地下壕の保存や公開を求めている。

     寺町を抜け、「愛染さん」と親しまれる「勝鬘(しょうまん)院」へ。有名な「愛染かつら」がある。1本の木のようだが、樹齢数百年のカツラにノウゼンカズラが巻き付いている。むつまじい男女を思わせ「縁結びのご霊木」とされる。カズラは花盛りだ。

     勝鬘院は空襲で多宝塔など一部を残し、建物を焼失した。カツラも焼け、枯れたという。

     住職の山岡武明(ぶみょう)さん(44)は「枯れてもカズラがしっかり抱かまえているので倒れることはない」と話す。

     川口松太郎の小説「愛染かつら」は何度も映画化され、木の前は年配の参拝客が映画の主題歌を歌ったりする盛り上がりポイント。映画会社が別のカツラを寄贈したが、その木にカズラが巻き付くことはなかった。

     先代住職の奥田聖応さん(79)は、45年12月に疎開先から帰ったとき、「周りは何もなくなっていた」と振り返る。食料不足で境内はイモ畑に。「夜には盗みに来るのがいてねえ。みんな生きるのに精いっぱいやった」。当時の住職だった奥田さんの父が分けてやることもあったという。

          ◇

     府内に残る戦争の跡。今春までの連載に続き、再び訪ねる。

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