金沢の味 その三=室生洲々子 /石川
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私の金沢暮らしも早いもので、もう一〇年になる。その時間の流れの中で、私は金沢という街の持つ、いくつもの意外な面を知り体験することになった。
祖父母ともに金沢の人であったから、我が家の味はずっと、金沢の家庭料理が中心であった。それ故(ゆえ)金沢の食材は、ある程度知っているつもりだった。だが暮らしてみると、初めて見、口にするものが沢山(たくさん)あった。金沢は周知のように、日本海の海の幸が豊富な土地である。だから、食事をしようと入ったお店で、豚足が出て来た時にはびっくりした。コラーゲンが豊富だから、肌によいと知人に勧められた。口に入れると思っていたよりも柔らかかった。トロッとした、何とも言えない食感が広がった。お肉は嫌いではないが、脂身は苦手である。
それからしばらく後の事。スーパーで挽肉(ひきにく)を探していた時、ふと横を見ると、ラップに包まれた…
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