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余録

根っから善良な人には悔しいことだが…

 根っから善良な人には悔しいことだが、世の中には悪事をなそうとする人にも幸運というものがある。泥棒にも「渡りに船」「棚からぼたもち」「闇夜のともしび」「大海の木片」……しめたッと思う瞬間はある▲思いがけない幸運をいう「もっけの幸い」のもっけとは「勿怪」または「物怪」で、もののけのことという。つまり妖怪か何かのしわざとしか思えないような運の良さをいうのだが、それが悪運とあっては善良な人たちはたまらない▲大阪の富田林署に勾留されていて逃走した容疑者にすれば、まさに「もっけ」が束になって逃がしてくれたような成り行きに驚いてはいないか。このもののけ、その正体は警察の信じられぬような手抜かりと怠慢にほかならなかった▲弁護士との接見後に逃走した容疑者だが、接見終了を伝える面会室の扉のブザーは1年以上前から電池を外されていた。面会室のアクリル板は容易に枠から外れ、署の塀のそばには脚立が置かれていたという至れり尽くせりである▲逃走発覚まで1時間45分かかったのに加え、住民への情報提供が大幅に遅れたのもいただけない。その後、周辺各地では容疑者による事件と疑われるひったくりが相次いだ。逃走が長引けば住民の不安は他の地域にも広がるばかりだ▲接見は容疑者の人権を守る重要な制度だからこそ、ルールにもとづく管理に手抜かりがあってはならない。容疑者の逃走をまねいた怠慢が、接見の制限につながる別のもののけに化けないように願いたい。

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