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理想の図書館を求めて

/5止 慶応大・糸賀名誉教授に聞く 集客力ある公共施設 優秀な職員置き、魂を入れて /茨城

 自治体の図書館はどうあるべきか、各地で模索が続いている。まちづくりの中でどう位置づけるか、そして住民たちは何を求めているのか、全国の図書館を訪ね歩き研究を続ける慶応大の糸賀雅児(まさる)名誉教授(図書館経営論)に尋ねた。【聞き手・大場あい】

     --守谷市が来年度、指定管理者制度に基づいて民間事業者が担っていた市立図書館の運営を直営に戻すのをどう考えるか

     ◆守谷は、教育委員会からの諮問に図書館協議会が指定管理を否定する答申をまとめ、これを市長が受け入れた珍しいケースだ。公民館図書室4室を分室として抱える中央館では、規模から見ても指定管理がもともと無理があったように思う。

     --図書館を民間の指定管理者が運営することはどう考えるか

     ◆指定管理者制度は、本来地方自治法に基づいて「施設管理」を民間事業者に任せる制度。例えば体育館の器具類の維持管理や利用受け付けなど定型化できる業務にはなじむ。一方、図書館は本を選定し、サービスを企画し、不特定多数の利用者のニーズに臨機応変に対応するといったマネジメントを行う専門職集団からなる「機関」であって、指定管理にはなじまない。そもそも図書館の運営に全国一律のマニュアルはなく、自治体の歴史や文化、産業に合わせてサービスを組み立てなければならない。図書館職員は首長部局の職員と一体となってサービスを構成する必要がある。自治体の職員同士でこそ対等に議論できるはずだ。

     --すると、指定管理は厳しいということか

     ◆指定管理がしかたない場合もある。役所の人事異動で知識も意欲もない職員が配置されたり、有期雇用の非正規職員ばかりといった自治体もある。それなら、民間事業者の方が司書資格を持ち、意欲あるスタッフを多く抱えており、指定管理でとりあえず及第点レベルの運営は可能だ。ただ、理想の形ではなく、90点や100点満点近い図書館となることは無理だろう。

     --民間の指定管理者にできないことは何か

     ◆その自治体の施策に寄り添った図書館サービスを組み立てられる人材が育たないことだ。これからの図書館の役割として「課題解決」が挙げられることが多いが、課題は自治体によって違う。課題に対応した蔵書の構成やサービスを考えるのは、そこに長く暮らし、地域の生活を見てきた職員でなければできない。住民の側にも地域のために役立ちたいと思う人は多い。そうした人たちの学びの場として図書館は最適だ。生涯学習とはそうした住民を育てることだと思う。

     --駅前再開発ビルの中に新たな図書館をオープンした土浦市のように、図書館をまちづくりの拠点として、にぎわい創出に使おうという自治体が増えている

     ◆図書館は「本好きな人が使う施設」くらいにしか思われていなかったが、公共施設の中で最も集客力がある。だが、一般的に「まちづくり」に活用する事例として聞くのは、図書館に人が集まることで中心市街地を活性化させたり、買い物客を周辺施設に誘導し、経済効果をもたらしたりすることへの期待のほうが大きい。これは邪道だと思うが、正論だけでは図書館の存在感はどんどん希薄になってしまう。もしツールとしての図書館の有効性に気づいてくれたのであれば、まともな図書館を作ってほしい。そして建物だけでなく、そこにちゃんと魂を入れるべきだ。優秀な職員を10~20年という長いスパンで計画的に配置し、地域住民とともに育つ機関にするのであれば、再開発の一環としての図書館の活用も十分にあり得るだろう。=おわり

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