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的川博士の銀河教室

512 火星の水/3止 高まる生命発見への期待

 米航空宇宙局(NASA)の無人探査車キュリオシティーは、火星のシャープ山(写真1)のふもとで、岩石表面を深さ5センチまで掘削(くっさく)して(写真2)泥岩(でいがん)のサンプルを採取し、搭載(とうさい)しているフランス製機器による分析(ぶんせき)の結果、有機物をいっぱい含(ふく)む地球の堆積岩(たいせきがん)に似た有機化合物を発見しました。この地域には火星の淡水湖(たんすいこ)が存在していたと考えられています。

     しかもキュリオシティーからの3年分の測定データから、火星大気中のメタン(簡単な有機物)濃度(のうど)が季節変動することを示す証拠(しょうこ)も発見しています。これは、メタンの発生源が火星にあり、おそらく火星の地下水である可能性が高いことを示唆(しさ)しているようです。

     このメタンガスは、実は生物から直接大量に発生する事実が広く知られているのです。地球の場合、特に海中にすむバクテリアはその大きなソースの一つで、家畜(かちく)や人などからも膨大(ぼうだい)な量のメタンガスが放出されます。腸内の細菌(さいきん)がその源で、ガスがおならやフンなどと一緒(いっしょ)に体内から出てきます。そのうち、大気の一部として蓄(たくわ)えられたメタンガスは、いわゆる「温室効果ガス」の一つとして、二酸化炭素などとともに「地球温暖化」の元凶(げんきょう)とされていることは有名ですね。メタンガスは、生物以外にも例えば火山の噴火(ふんか)やさまざまな化学反応によって生成されるケースもあるので、これからは、火星のメタンが、生物から発生したものかどうかの探査が本格化するものと思われます。

     それにしても、このたびの報告のように、火星の地下に巨大(きょだい)な湖が存在しているとしても、その火星の厳しい環境(かんきょう)で生き物が生息できるのでしょうか。地球では、1980年代以来の科学的調査により、「深部地下生物圏(けん)」と呼ばれる新たな生物圏がひろがっていることが明らかになっています。深海や地下深部も暗黒の世界に、光合成に依存(いそん)しない生物がいることも分かっているのです。そして地下数キロの深さに生息するのは微生物(びせいぶつ)だけだと考えられていた2011年、地下3.6キロという深さに、そうした微生物をエサにしている線虫(体長0.5ミリ、写真3)が見つかり、世界を驚(おどろ)かせました。この発見は、地下にこれまで知られていなかった豊かな生物圏が存在することをあらためて示唆しています。

     こうした状況(じょうきょう)を考えると、火星の生物という長年の調査に勢いがつくことは間違(まちが)いありません。今回の火星における膨大な水をたたえた地下の湖の存在というニュースは、火星探査が新たな段階に踏(ふ)み出す大きなステップになることでしょう。(「火星の水」完)


    的川泰宣(まとがわやすのり)さん

     長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。


    日本宇宙少年団(YAC)

     年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac-j.or.jp


     「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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