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公文書クライシス

満蒙開拓団、戦後調査資料 廃棄・不明、14道府県

山形県の資料は「全員自刃玉砕」の文字が読み取れる=板子房(バンズファン)開拓団の実態調査資料の一部、佐藤良一撮影

 1932~45年、旧満州(現中国東北部)に国策で推計約27万人が送り込まれた「満蒙(まんもう)開拓団」について、戦後に都道府県が実施した全国実態調査の資料が13道府県で確認できず、1県は廃棄したことが毎日新聞の全国アンケートで判明した。戦後間もなく団の幹部らから直接聞き取りした、他にはない貴重な1次資料だが、資料の残る33都府県も保存期間はまちまちで、今後廃棄される可能性もある。

     資料は外務省が50年に都道府県に調査を指示した「満蒙開拓団実態調査表」。15~19歳(数え年)の8万6000人以上を現地に送った「満蒙開拓青少年義勇軍」の調査表も含まれる。

     調査内容は、入植年月日や所在地に加え、入植地ごとの開拓団の人数▽45年8月9日の旧ソ連参戦時の状況▽同15日の終戦直後の移動状況▽引き揚げ者・未引き揚げ者数--など十数項目に上る。

     毎日新聞が47都道府県にアンケートしたところ、長崎は「廃棄」と回答。2000年に個人情報保護の観点から行政文書の永久保存をやめ、保存期間の上限を30年とした結果、廃棄したという。13道府県は「不明」で、資料が確認できなかった。このうち富山と岐阜は「廃棄したと考えられる」と答えた。一方、33都府県では保管が確認された。うち9都府県は永久保存扱いだったが、24県は保存期間が過ぎれば廃棄対象になり得ることが判明した。

     資料を公開しているのは20府県。神奈川は95年、県立公文書館に歴史公文書として移管し、昨年10月から全面公開している。担当課は「個人情報が含まれるが、文書作成から相当の期間が経過しているため一般公開とした」と説明する。非公開は10都県で個人情報保護が理由だった。新潟、愛知、三重は「請求が来れば一部公開を検討する」(担当課)と回答した。

     満蒙開拓団は旧ソ連軍の侵攻などで約8万人が犠牲になったとされる。毎日新聞が山形県に情報公開請求し、一部開示された開拓団の実態調査資料には「全員自刃玉砕」など、終戦時の集団自決の様子などが克明に記録されていた。

     開拓団の1次資料は国から人数を割り当てられて募集した市町村にもほとんど残っていない。ただ、全国実態調査を要約した数ページの調査表と在籍者名簿などが外交史料館(東京都港区)と国立公文書館(同千代田区)にある。

     開拓団を研究し、歴史公文書の管理にも詳しい加藤聖文・国文学研究資料館准教授は「満蒙開拓団の関係者が記録した唯一の1次資料だ。廃棄されつつある現状を放置すれば歴史の抹殺につながる。担当課まかせにするのではなく、歴史公文書として公文書館などに移管し、永久保存すべきだ」と話している。【佐藤良一】


    満蒙開拓団実態調査表の保存状況

    <保管>

    ●永久保存=9

    (岩手)、千葉、東京、(神奈川)、三重、(京都)、(鳥取)、(佐賀)、鹿児島

    ●保存=24

    (青森)、宮城、(秋田)、(山形)、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、石川、福井、(山梨)、(長野)、(静岡)、愛知、(兵庫)、(奈良)、(和歌山)、(島根)、(徳島)、(香川)、(高知)、(福岡)、(宮崎)

    <不明>

    ●確認できず=11

    北海道、埼玉、滋賀、大阪、岡山、広島、山口、愛媛、熊本、大分、沖縄

    ●廃棄と推定=2

    富山、岐阜

    <廃棄>

    長崎

     ※( )は資料を公開している府県(全面、一部を含む)


     ■ことば

    満蒙開拓団

     日本が1932年、中国東北部に樹立したかいらい国家「満州国」に、45年まで全国から送り込まれた約27万人の農業移民。29年の世界恐慌の余波で農村が困窮し、国内の人口問題解消と食糧増産に加え、旧ソ連との国境地帯強化を狙ったとされる。県などが積極的に移民策を推し進めた長野県からの入植者が最も多かった。後期には開拓団補充のため、数え年で15~19歳の青少年が「義勇軍」として送り出された。45年8月9日に旧ソ連が対日参戦すると、約8万人の開拓団員が集団自決や餓死、凍死などで犠牲になったとされる。帰国できなかった子供や女性は残留孤児や残留婦人と呼ばれ、主に80~90年代に永住帰国した。

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