メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

新・心のサプリ

「夏の暑さにも負けず」=海原純子

 山口県で母親の実家に遊びに来ていた2歳の男の子が行方不明になり、3日ぶりにボランティアの男性に助け出された。この暑さと気象条件のなかでの救出だったから、報道をきいて心からよかった、と思った。後になってボランティアの男性は78歳で、東日本大震災をはじめ、各地の被災地で活動なさっていたことを知った。小型のワゴン車に寝袋や食糧をつみ、そこで寝泊まりしながらボランティアをなさるとのこと。陽(ひ)やけした笑顔で、男の子を救出した後、15時間ぶりという食事を戸外でとる様子をテレビで見たのだが、白いご飯に赤しそがのっているシンプルなものだった。その時思いうかべたのが、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」である。本棚に置いてある宮沢賢治の詩集をあけて詩を読みかえした。

     雨ニモマケズ

     風ニモマケズ

     雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ

     丈夫ナカラダヲモチ

     慾(よく)ハナク

     決シテ瞋(いか)ラズ

     イツモシヅカニワラッテヰル

     一日ニ玄米四合ト

     味噌(みそ)ト少シノ野菜ヲタベ

     アラユルコトヲ

     ジブンヲカンヂョウニ入レズニ

     (中略)

     サウイフモノニ

     ワタシハナリタイ

     久しぶりに詩を読みながら心が洗われるのを感じた。

     他者のために何かをすることは、心の活気を上昇させるという調査結果がある。この場合何かをすることが義務感になっていたり、そのことでほめられたり、評価されたりすることが目的だと、評価という見返りがない場合に気持ちがおちこんでしまうが、見返りを求めない場合は、人を助けることにより自分も元気になるのである。他者のために何か手助けをして感謝された時のことを思いうかべてほしい。「ありがとう」という言葉で、自分も「よかった」と思うと共に、自分の行動に納得がいく気分になったはずだ。「自分が自分でいい」という気持ち、自己肯定感は生きる支えになる。またそのことが、自分自身が困難な状況をのり切るエネルギーにもなるのだと思う。

     年をとると未来に不安がつきまとう。貯金がないと不安、病気になったらこわい。そんな不安とおそれで、自分の身だけを守ろうとする傾向が生まれてしまいがちだ。またそうした生き方を見る若い世代の人たちとの間に断絶が生まれてしまう。そんな時、素敵な大人の生き方に出合うと本当に嬉(うれ)しくなってくる。「あの人は元気で丈夫だからできるのよ」などと言う人もいるかもしれない。しかし、私はその反対に「他者のために何かをすること」でエネルギーが生まれているように感じた。

     誰もが身体を使うボランティアはできない。でも、できる範囲で他者のために何かをすることで、世の中はちょっと明るくなり、自分にもエネルギーが返ってくるように思う。(心療内科医)

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 日産会長逮捕 ゴーン神話「数字の見栄え良くしただけ」
    2. ゴーン会長逮捕 日産社長「私的流用、断じて容認できない」 会見詳報(1)
    3. 高校野球 練習試合で頭に死球、熊本西高の生徒が死亡
    4. 全国高校サッカー 県大会 西京、5年ぶり全国切符 高川学園の猛攻しのぐ /山口
    5. 日産 ゴーン会長を解任へ 「会社資金を私的に流用」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです