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このごろ通信

存在しない宛先 水原涼(作家)

 僕がまだ幼かったころ、実家の郵便番号は三桁だった。葉書(はがき)や封筒の右上に大小の四角形が五つ並んでいるうち、僕たちは左側の大きな三つに「680」とだけ書いて、右側は空欄にしたり、ちいさな動物のシールを貼って叱られたりしていた。教育熱心だった母は、この数字は何なのかと訊(き)く僕に、「68」はこういう意味、「0」はこういう意味、と教えてくれたけれど、内容はすっかり忘れてしまった。ただ、住所という、見た目には切れ目などない土地に架空の線を引いて切り分ける概念をようやく理解したばかりなのに、今度はそれに数字を当てはめ、そしてその数字を書く欄を五つ用意しておきながら、そのうち二つは使わない、というやりかたに、ひどく混乱したのは憶(おぼ)えている。ようやくそのシステムを受け入れたと思った矢…

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