メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

このごろ通信

存在しない宛先 水原涼(作家)

 僕がまだ幼かったころ、実家の郵便番号は三桁だった。葉書(はがき)や封筒の右上に大小の四角形が五つ並んでいるうち、僕たちは左側の大きな三つに「680」とだけ書いて、右側は空欄にしたり、ちいさな動物のシールを貼って叱られたりしていた。教育熱心だった母は、この数字は何なのかと訊(き)く僕に、「68」はこういう意味、「0」はこういう意味、と教えてくれたけれど、内容はすっかり忘れてしまった。ただ、住所という、見た目には切れ目などない土地に架空の線を引いて切り分ける概念をようやく理解したばかりなのに、今度はそれに数字を当てはめ、そしてその数字を書く欄を五つ用意しておきながら、そのうち二つは使わない、というやりかたに、ひどく混乱したのは憶(おぼ)えている。ようやくそのシステムを受け入れたと思った矢…

この記事は有料記事です。

残り521文字(全文868文字)

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 新潮45休刊 「組織ぐるみ擁護に怒り」新潮社前でデモ
  2. 静岡・沼津 「深海プリン」インスタ映えで話題
  3. 新潮社 「新潮45」休刊声明全文 「深い反省の思い」
  4. 新潮社 「新潮45」が休刊 杉田氏擁護特集で批判浴び
  5. 大相撲 貴乃花親方「告発は真実」 信念貫き、角界去る

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです