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余録

花を10種ほど書いて名前を考えた。すみれが好きだったが、さくらとももが並んでいるのを見て…

 花を10種ほど書いて名前を考えた。すみれが好きだったが、さくらとももが並んでいるのを見て「さくらももこ」がひらめいた。筆名ではなくお笑い芸人の芸名としてである▲昔から漫画家になるのが夢だったが、恋愛ものの少女漫画を描いてもうまくいかず、雑誌に投稿したら案(あん)の定(じょう)選外となった。ならばお笑いの道をめざそうとひそかに芸名を考えたが、いざ弟子入りを申し込む段になって足がすくんだ▲人生を変えた「虹色の風呂場」に立ったのは、漫画家もお笑いも遠のいたそのころだった。模擬テストの作文が意外にも「清少納言(せいしょうなごん)が現代に来て書いたようだ」と激賞され、うれしくて頭を冷やそうと飛び込んだ自宅の風呂場である▲「窓が昼の光で輝いていた。ホースから出ている水がキラキラ輝いていた。水しぶきも全部輝いていた。風呂場全体が、虹色に包まれているように感じた」。アイデアがそこに降り立った。エッセーを漫画で描いたらどうだろう!▲さくらももこさんのエッセー集「ひとりずもう」にはその1年後、デビュー決定を伝える漫画誌を開いた日の思い出のイラストがある。エッセー漫画。昭和の子ども時代を温かくもどこかさめた目で切り取り、平成の人々の心をつかんだ「ちびまる子ちゃん」だった▲「毎日、人の数だけ違う事が起こっている。同じ日なんて無い。一瞬も無い。自分に起こることを観察し、面白がったり考え込んだりする事こそ人生の醍醐味(だいごみ)だ」。聞くほどに残念な早すぎる旅立ちである。

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