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くらしの明日

私の社会保障論 算数オリンピック 未来の人材獲得に生かせ=東レ経営研究所・渥美由喜

渥美由喜(なおき)

 理工系のノーベル賞受賞者者数で世界トップ5に入る我が国で、「国の心、子知らず」の状況が続く。国はイノベーションの創出や産業競争力強化に不可欠な理工系人材の育成戦略を掲げるが、子どもの「なりたい職業ランキング」で理工系人気は低迷する一方だ。約50年前、男子の人気トップ10は、(1)エンジニア(5)電気技師(6)医師(8)科学者(9)建築士--と理工系職業が半分を占めていた。しかし、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会の調査によると、2017年は(3)医師(5)建築士(10)科学者にとどまり、科学者は(6)ユーチューバーの後塵(こうじん)を拝する有り様だ。

     そんな中、理工系人材育成で大きな役割を果たしてきたのが「算数オリンピック」だ。1992年以降、毎年、小中学生の学年別に算数の能力を競う大会が開催されてきた。創設者の若杉栄二理事長によると、当初、十数年は赤字だったが、全国有志の協力のもと、同氏が身銭を切って継続してきたそうだ。

     四半世紀がたち、最近は全国から5000人、海外でも中国から十数万人、シンガポール、タイから500人が参加する一大イベントとなっている。予選を通過した1000人は全国3カ所で行われる決勝大会に進み、上位成績者にはメダル、表彰状、トロフィー、副賞が授与される。過去のメダリストには、その後、国際数学オリンピックなどで活躍している者も多い。

     「理工系人材」が喉から手が出るほど欲しい産業界には、ぜひCSR(企業の社会的責任)の観点から、さらにはCSV(共通価値の創造)の観点からも算数オリンピックを後援してほしい。小中学生のメダリストは生涯を通じて当該企業に好感を持つだろう。彼らがそうした企業に研究者として就職すれば、後援に要した費用をはるかに上回る貢献をしてくれるはずだ。

     また、ぜひとも日本政府には、わが国発祥の「算数オリンピック」を世界に広め、海外の子どもが日本での決勝大会に進む際に、彼らの滞在・国内移動費用等を後援してほしい。香港は、類似イベントに十数カ国の子どもを招待している。

     我が国にはジブリ映画、ドラえもん、ポケモンをはじめ、海外でも大人気のキラーコンテンツがたくさんある。海外の優秀な子どもには「三鷹の森ジブリ美術館」「藤子・F・不二雄ミュージアム」、パナソニックセンター東京の理数体験ミュージアム「リスーピア」などを見学させたら、とても喜ばれるだろう。

     我が国が誇る「おもてなし」は、東京オリンピックに来る観光客たち向けだけではなく、算数オリンピックに関心を寄せる、海外の若年世代にこそ向けるべきだ。未来の「高度外国人材」の獲得に向けた長期的な戦略として、きわめて有効な施策となるはずだ。(次回9月5日は宮武剛さん)

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