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社説

小池都知事の追悼文見送り 既成事実化は許されない

 関東大震災に伴って起きた朝鮮人虐殺の犠牲者を慰霊するため、毎年9月1日に開かれる追悼式典に、小池百合子東京都知事が、今年も追悼文を送らないという。

     今月10日の記者会見で「全ての犠牲者に哀悼の意を表している。個別の形での追悼文送付は控える」と、昨年と同じ理由を説明した。

     大震災時「朝鮮人が暴動を起こした」などとするデマを住民らが信じ、多数の朝鮮人らが虐殺された。追悼式は、日朝協会などが主催して開いている。

     追悼文を送らない小池氏の姿勢は民族差別を背景にした虐殺に懐疑的な見方をしているように見える。

     しかし、政府の中央防災会議も虐殺の犠牲者数を、震災死者10万5000人の「1~数%に上る」という推計を報告書に記している。数々の証言集もある歴史的事実だ。

     しかも、地震という自然災害で亡くなることと、人の手による虐殺で命を奪われることは、根本的にその「死」の性質が異なる。

     それを「全ての犠牲者」という表現でひとまとめにすることは、この事件に対して距離を置きたがっていると見られても仕方がない。

     小池氏は昨年、虐殺について「さまざまな見方がある。歴史家がひもとくもの」とも述べている。

     だが、なぜ個別の追悼文を控えるのか、虐殺に対する自身の認識は語っていない。今年も同様だ。

     日朝協会など主催者らは今月、都庁を訪れ、小池氏の追悼文送付を求める約8600筆の署名を渡した。

     小池氏がこれを拒み、知事としての追悼文を出さないことを既成事実化するのは許されない。

     知事からの追悼文は、市民とともに事件を振り返り、二度と惨劇を起こさないよう誓う意味がある。

     災害発生の非常時には、不安な心理を背景にしたデマが流れやすい。東日本大震災時、被災地で「外国人犯罪が横行している」とのデマが広まった。2年前、東北学院大が仙台市民に調査したところ、8割以上が「それを信じた」と回答している。

     95年前の惨劇を過去のことと切り離すべきではない。だからこそ毎年過去を確認し、不幸な歴史を繰り返さぬ決意を示すことが必要だ。それが行政トップである知事の役割だ。

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