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毎日フォーラム・スーパーシート

マテリアル社長 細貝淳一(52)

細貝淳一氏

支えてくれた物作り文化を残したい

 ガソリンスタントで働いていた時に、金属材料会社から営業をやらないかと誘われ勤めた。100円の金属材料を売って8円を儲ける仕事だった。取引先の加工会社では、この材料が10万円で売られていた。会社に帰って「加工までやりましょう」と提案したが実現しなかった。26歳の時に加工までやる会社を作ろうと考えて独立した。

     東京都大田区の板金屋の一角を借りてスタートした。最初から何でもやりますと、納期管理から難しい仕事まで断らずにやってきた。要望を聞くうちに、段々と設備を入れ、人を入れて成長してきた。自分のイメージの中で5年先とか、10年先を考えながら、会社は少しずつ形を変えてきた。従業員30人くらいの精鋭部隊をそろえた会社にしたいと考えている。

     材料を販売しているので、加工物を作る前に材料の特質を知っている。これが強みだ。最適な加工環境を作れるので、どこよりも早く納入することができる。アルミ加工に特化した専門的な会社のイメージを作ることができた。製作にかかわる11人のうち9人が機械を動かすプログラムの技能検定など国家資格の1級を持っている。それが大手企業に評価されている。てのひらに置いて見えないような加工物から3メートルの加工物まで、一貫して生産できる会社に成長した。

     一番きつかったのは独立したその日だ。のれん分けの約束は全部、不履行になった。仕入れ先はない、会社を辞めたことも言ってはならない、開拓したお客には顔を出すなと言われた。材料の仕入れ先をストップされ、元の勤めていた会社から10%高く買わされた。そういうことがあって、町工場ではなくて大手企業を開拓しようと決めた。大手企業との取引をイメージできたのは、そういう逆境があったからだ。

     16年前には、さらに取引先を大企業に替えようと考えた出来事があった。取引先の営業マンが独立したいので経営の勉強させてくれと頼んできた。この営業マンに同行して、取引会社に理解してもらおうと説明に行き、社長に了解してもらったが、その会社の門を出る前に取引停止にされた。その同じ時期に、売り上げの半分を占めていた取引先から、未収金の1500万円を4年分の値引きだと言われ回収できなかった。弁護士に連絡した瞬間、取引を切られた。その時が一番きつかった。

     当時3億円の売り上げが1億8000万円まで落ちた。その時に思ったのは中小企業相手では、社長が風邪を引いた時に取引が切られてしまう。大手企業ならそうはならないと思って、大きな仕事をしなければならないと考え、現在の本社の土地を買った。土地を買った時に根抵当権が上がり、運転資金を確保できた。その金で設備投資もできた。そこから大手電機会社などとの取引が増え、売り上げが伸びて現在に至っている。

     一から会社を立ち上げてきて、それができたのも大田区という地域のおかげだ。物作りが私を支えてくれた。そうした文化は根強く残していきたい。縁の下の力持ちとして、この地域中間の経営者たちにアドバイスしていきたいと思っている。

     ほそがい・じゅんいち 1966年東京都大田区生まれ。材料販売会社の営業経験をもとに92年に前身の有限会社を設立。アルミ切削加工分野でリーダー企業に育てた。2011年から下町ボブスレーを始め、推進委員会ゼネラルマネージャーを務めた。公職や民間企業のアドバイザー役は多数。フィギュア集めと大田区の仲間と組むバンド演奏が趣味。「定時制高校の全国軟式野球大会に都代表として出たこともある」と話す。

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