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毎日フォーラム・ファイル

自動運航船 実証事業がスタート 国交省

自動運航船のイメージイラスト=日本船舶技術研究協会提供

ICT、AI活用 25年の実用化目指す

 海上安全の向上や船員・労働者不足などへの対応が迫られる中、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などを活用した自動運航船への取り組みが加速している。国土交通省は6月にロードマップを示し、「自動操船」「遠隔操船」などの三つの機能についての実証事業をスタートさせた。2025年の実用化を目指して安全基準の策定に必要なデータの収集などを行う。また、IMO(国際海事機構)は国際ルールの策定に向けた議論を始めており、自動化の波は自動車だけでなく船舶にも高く押し寄せている。

     国交省は、世界の海運、造船業界は自動運航船の実用化への競争が激しくなると見ている。欧州では5年ほど前から船の機械や部品、コントロールシステムなどを作る大きな舶用機器メーカーが主導して盛んに技術開発に取り組んでいる。特にイギリスのロールスロイス社は陸上のコントロールセンターから遠隔操作で動かす無人貨物船を20年までに実用化すると発表しており、自動運航船をめぐる動きはここにきて活発化してきた。

     政府は16年6月の交通政策審議会海事イノベーション部会の報告書で「戦略的に取り組む分野」の中にIoT(モノのインターネット)とビッグデータを活用した運航支援・保守管理サービスの普及を盛り込んだ。今年6月のフォローアップでは今後の取り組むべき方向性として自動運航船について政策として初めて言及し、IMOでの国際的な基準策定の方向性、国による支援などを大きな柱に位置づけた。

     自動運航船の実用化が急がれる背景には、まず、海上安全の向上への期待がある。海上保安庁によると16年の全国の海難事故は2014件と若干減ってきているものの、原因は「見張り不十分」「操船不適切」「機関取扱不良」などが上位を占め、約7割が人為的要因だった。自動化によってこれらヒューマンエラーが少なくなれば事故の減少につながる。

     船員不足や船舶関係の労働環境改善への要望も大きい。船員不足は日本だけでなく世界的な傾向で、将来に向かってさらに不足することは確実。今後年間300人以上の船員が不足するという予測もある。このためIoT技術などの活用で省力化して船員の待遇改善を図り、魅力ある職場にして新たな人材を呼び込もうという。

     さらに、新造船の受注量激減などからの脱却のために自動運航技術による造船産業の競争力強化も目指している。日本の船は燃費が良いなど省エネ技術では高い評価を得ているものの公的支援を受ける中国や韓国の安値攻勢によって造船業界は苦境に陥っている。また、造船現場で必要不可欠な存在になっている外国人造船就労者の受け入れが22年度末に終了することからコストのアップも予想される。今後、自動運航船の技術で優位に立ち中国、韓国との差別化を図りたいという思いも強い。

     実用化に向けたロードマップでは、フェーズ1として、各種センサー、通信などからデータを収集し、分析結果に基づいて船のシステムが最も適した航路を提案したり、エンジンの異常を知らせる機能などが備わった船舶の実現を想定した。先進的な取り組みは始まっており、20年ごろには普及期を迎えるとしている。

     フェーズ2は高度なデータ解析技術やAIによって船員が取るべき行動の提案をするとともにその判断に必要な情報を見える化する船舶や、陸上から遠隔操作ができる船舶を想定し、25年までの実用化を目指している。20年より前に取り組みを始め、国が技術開発、実証を積極的に支援するとともに、基準や制度について内航船などでできるものから実施していく、という。

     さらにフェーズ3では、さまざまな航路の交通状況やどんな気象条件下でも適切に機能するシステムを持ち、自律性が高く、システムの提案に対して船員でなくても最終意思決定を行う領域が出てくる船舶を想定している。運航に関する権限や責任関係など技術的側面以外の内容も含めて中長期的に検討するとした。

     国交省はフェーズ2を見据えて今年度から自動運航の基準策定などに必要なデータを得るために(1)自動操船(2)遠隔操船(3)自動離着桟(桟橋・岸壁への離発着)--の3機能についての実証事業をスタートさせた。

     (1)では各種センサーや自動船舶識別装置(AIS)、電子海図などを使って事前に設定した航路を自動で航行させる。他の船との衝突防止のために回避する航路の提案や座礁予防の機能などが正しく作動するかを確認し、必要なデータを収集する。長崎県の大島造船所とMHIマリンエンジニアリングが担当し、今年度はプログラム構築した上で、シミュレーションするという。

     (2)はGPS機能やVサット、AISなど使って陸上のオペレーションセンターから無線でコントロールして航行させようというもので、日本郵船やMTIなど16社が参加する。電子海図や赤外線カメラなどを駆使して船舶側に備える機能や陸上に送信すべき情報、通信が途絶えた時の安全確保策などの検討に向けたデータ収集などを行う。今年度はそのシステム開発を予定している。

     また、船員たちが最も神経を使うという離着桟を自動化しようという(3)については三井E&S造船など4社で実施する。1日にいくつものバースを行き来する船も多く、問題なく離着岸するためには船の姿勢のほか横へのスピードや岸壁との距離、風や波、近くの船を正しく認識してコントロールしなければならない。今年度は東京海洋大の汐路丸を使い、桟橋に見立てた海上の仮想岸壁などでシミュレーションをしてデータを収集する。

     国交省は3機能とも今後実船、実岸壁で検証を行い、得られたデータをそれぞれの基準作りに活用していくという。

     一方、174カ国が加盟するIMOは5月に開いた海上安全委員会で自動運航船の国際ルールの策定に向けた本格的な議論を始めた。会合では必要な現行規則の改正や新たな基準作りのために暫定的に自動運航船の定義や自動化のレベルを定めた。次回の12月までに自動化のレベルに応じて改正などが必要となる国際ルールについてメールベースで議論を重ね、検討を加速させていくことで合意した。国交省は国際ルールの議論をリードし、自動運航船についての優位性を確保していきたいとしている。

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